Sweet break Ⅳ

そう…むしろ、触れてみたいのに。

もっと普通の恋人達のように、手を繋いだり、ぎゅっとくっついたり…してみたい。

自分の不甲斐無さに分かりやすいくらいに沈んでしまうと、関君は呆れたように…、それでいて職場では絶対に見せない笑みを浮かべながらフォローする。

『わかってる…心配しなくていい』
『…ごめん』
『何、謝ってるんだ』
『だって、せっかくのデートなのに』
『別に怒ってるわけじゃない』
『でも…』
『それより映画の時間、間に合わなくなるから行くぞ』

そういうと、休日のショッピングモール内を、併設している映画館に向かって歩き出す。

慌てて前を進む関君を追いかけながら、いつだったかの関君のセリフを思い出す。


”…お前に近づくたびに、どうしても触れたくて仕方なかった…”


”…早く俺に慣れろ…じゃなきゃ、身が持たない…”


あの関君が、いわゆる世で言う”女性の色気”とはかけ離れた私に、あの時、憂いの籠った眼差しで言ってくれた。

もしかして、もうそういう気持ち無くなっちゃったのかな…。

でも、休日なのにちゃんとこうして二人で会ってるし。

いや待って…考えてみたら、ただ映画に行きたかったってことも有る?

見知らぬ人より、気が楽だから的な?

ハッ…まさか、これもただの友人としてだったりして?

ならもう、私のこと異性として好きとかじゃ、なくなったのかも…
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