Sweet break Ⅳ
『それに、皆さんが思っているよりも、関さんずっと優しいです』
『…優しい?』
『言葉ではあまりないですけど…』

何を思い浮かべたのか、やっぱりほんの少しだけ笑みを見せる落合さん。

彼女の表情から、それは落合さんだけが知ってる関君の一面のように聞こえて、胸の奥がモヤモヤとざわつく。

さっきからずっと続く、この気持ちは一体…。

『倉沢さんは、関さんの同期なんですね』
『うん、まぁ一応…私の場合、同期なんて名乗るのはおこがましいけど』
『?…どういう意味ですか?』
『私は、関君にとって、あまり役に立つようなこともできないから…』

言ってから、あまりにも個人的且つ、幾分卑屈な言い方になってしまったことに気づき、直ぐに話の方向を変える。

『それよりも、未来君も落合さんも二人とも凄いよ。配属してからまだ2ヶ月も経ってないのに、ここまでしっかり仕事できてるって。みんな感心してる』
『…簑島君は』
『未来君?未来君も、凄く頑張ってるよ。それこそ同期の落合さんに負けられないって。そういうのって、お互いの活力にもなるよね』
『…あの』
『ん?』
『倉沢さんは、簑島君のこと』

言いかけた言葉を遮るように、ちょうど定時を知らせるチャイムが流れる。

社内的に”ノー残業”を掲げる金曜日の為に、定時退社を促すアナウンスの後、会話の途中だった彼女に、質問の先を促した。

『ごめん。で、何だっけ?』
『いえ、何でもないです…カフェオレ、ごちそう様でした』

落合さんは立ち上がり、空のカップを流しに持っていき、サッと洗うと水切り籠に収める。
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