Sweet break Ⅳ
『まぁまぁ内山君、関君も気にしなくて良いって言ってくれてるし。第一、今回の件は君だけのせいとも言えないぞ。そもそも俺が、いろいろと言いそびれたわけだしさ』
軽い調子でフォローした主任を、内山さんがキッと睨みつけ、関君は冷たく冷ややかな視線を送る。
『あ…やっぱり悪いのは、全面的に俺…だな…す、すまん…』
場の雰囲気を深刻なものにしないようにしたつもりが、返ってふざけたように取られ、結局二人に謝罪する羽目になった川越主任。
関君は、小さく溜息を吐き、左腕にした時計で時刻を確認する。
『お二人共、今回の件は次回から気を付けていただければ、結構です。それより、この件について、あまり周りに口外しないでいただけますか。何も無いにも拘らず、変な誤解を招く可能性もありますから』
そう口にした関君が、一瞬こちらを見たような気がした。
『ああ、そうだな。それはもちろんわかってる』
『そうね。落合さんには、明日、私から個人的に謝罪するだけにするわ』
『お願いします。…では、もう良いですか?先約があるので、私はこれで失礼します』
用件は済んだとばかりに、用意していた書類の束を手にすると、この場を早々に立ち去る関君。
その後ろ姿に内山さんが再度謝罪の言葉をかけるも、振り返ることも無く、そのまま足を止めずに行ってしまった。
『ま、結局良かったじゃないか。向こうで二人とも何事も無かったわけだし』
『は?何かあってからじゃ遅いんですよ、主任!良いですか?今後このようなことが無いように、次からは必ず人数だけでじゃなく、誰と誰が行くのかまで、ハッキリ提示してください』
『ああ、わ、わかった…もちろん次からは、充分気を付けるよ』
内山さんはお気楽な主任にピシャリと提言すると、一転明らかに凹んだ表情で、こちら側にやってくる。