Sweet break Ⅳ
『ドンマイ、ウッチー』
気落ちしている様子の内山さんに、隣の席の澤井さんが慰めの声をかけた。
『あ~最悪。関君、絶対怒ってるよぉ…』
『内山さん、週末の出張で、何かあったんですか?』
『うん…ちょっとね、出張先のホテルの手配を、私がミスっちゃって…』
『ミス?予約の取り忘れ…とかですか?』
『ううん、予約はちゃんと取るには取ったんだけど…ね、いろいろ手違いがあって…』
言い渋る内山さんの代わりに、『倉沢ちゃんになら良いんじゃない?』と澤井さんが教えてくれる。
『ここだけの話、今回の出張って関君と落合さんの二人なのに、ウッチーがホテルをツイン一部屋しか取ってなかったって話』
『えっ』
『あ、あのね、言い訳になっちゃうかもだけど、今回の件は川越主任が出張に行くのが男女だなんて言わなかったのよ?ただ2名の出張ってだけで。っていうか、あの人いつもいい加減なんだよね、この前なんか出張日を1か月間違えて言ってきてさ…』
内山さんが川越主任の雑な依頼について愚痴りだしたものの、こちらはそれどころじゃなくなった。
『あのっ、それで関君たち、もう一部屋取れたんですか?』
『あ~それが運悪く、当日近くで大きな夏祭りがあったみたいで、どこも満室で取れなかったみたい。そもそも前日に、私の方で一部屋とれただけでも奇蹟だったんだもの』
『それじゃ二人とも…その…同じ部屋に?』
『まさか!流石にそれは無いよ。二人とも大人の男女だしね、それはマズいでしょ、いろいろ』
内山さん同様、その”いろいろ”を想像してしまった自分は、さっきから胸の奥がざわついて、冷静さを欠いてしまいそうになる。
『実は向こうで落合さん、体調崩しちゃったみたいで、結局関君が気遣って、ホテルの部屋は彼女に譲ってくれたらしいの。関君本人は、ホテルのロビーで仮眠取ったり、近くのファミレスで時間つぶしたりしてくれたみたい』
だからこそ余計に申し訳ないのだと、内山さんが続ける。