Sweet break Ⅳ
『でもそれって、真実かは、わからないけどね』
『ちょっと澤井!』

澤井さんがポツリと意味深な一言を落とし、内山さんが慌てて否定する。

『憶測で変な噂流さないでよ。さっき私が関君から言われてたの、聞いてたでしょ』
『だって相手は関君でしょ?私ならそんなチャンス、逃さないけどね』
『あんたはまたそんなゲスいことを…』
『遠く旅先のホテルで、偶然にもイケメントレーナーと二人きりの部屋…なんて、最高なシチュエーションじゃない?』

澤井さんは夢見がちな様子で、そうつぶやいた。

『あのね、関君たちはそもそも旅行じゃないからね』
『ほら!見知らぬ土地って、女性を解放的にさせるって言うし』
『仕事しに行ってんだから、解放的もなにもないでしょっ』

私と関君の関係を知らない二人は、気遣うこともなく思い付いたままの会話を続け、それはいつの間にか、単なる妄想雑談に切り替わっていく。

…それより。

出張先でそんなことがあったなんて、何も知らなかった。

関君からだって、何の報告も無い。

週末は、仕事中だろうからと控えていた連絡も、日曜に”お疲れ様”の連絡をしただけで、その返しも特別なものは無く、関君からの返信には、月曜日に振替休暇を取るというだけの、業務連絡みたいなものだった。

それは、内山さんが本人から聞いたように、向こうで何事も無かったから言う必要が無いってだけなのか。

…それとも、私には言えない何かがあったり…とかじゃないよね?

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