Sweet break Ⅳ



『怪しすぎるでしょ、それ!』

仕事終わりの紗季と駅前のカフェで落ち合うと、お互い明日も仕事だから…と、駅ビル内のレストランで健全なお食事。

出張の多い部署には今日、”宿泊を伴う出張の際は、人数と名前の提出を徹底するように”との通達が流れたらしく、その元となる今回の件は、紗季の所属する営業部の方では周知の事実のよう。

『で、関君本人は何て言ってるのよ?』
『関君とは、今日は直接話する余裕も無くて。一応メールはしてみたんだけど…ね』

結局今日一日、関君は自席に戻る時間もほとんどなく、複数の部署を巡り、それは定時を過ぎても変わらず、まともな会話さえできずに終わってしまった

唯一の連絡手段で、勇気を出して昼休みに送ったプライベートなメッセージに、既読が付いたのも、定時を一時間以上過ぎたついっさきのことだった。

『それで、なんて返してきたのよ?』
『「何も問題ない」って』
『それだけ?』
『あ、それと「変な詮索はするな」って釘射された』
『何よソレ、言葉足りなすぎでしょ。もっと他に言うことあるでしょうに』

紗季はまるで自分事のように憤慨し、ありがたいことに私の心の内側にある言葉を代弁してくれる。

19:30を過ぎ、ヘルシーな鳥料理を専門とする和風モダンな店内には、同世代の女性客の姿が多く、声を潜めて話す内容は、どれも私達の会話と大差がないように思えた。

『でも本当に何も無いのかも。だって、一緒の部屋に泊ったわけでもないし』
『ちょっと…朱音、まさかそれ信じてるの?』

ストレートな問いかけに、顔を上げ目の前の紗季を見れば、食事の手を休めて呆れたように小さく溜息を吐かれる。
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