Sweet break Ⅳ
★
水曜日。
昨日は、紗季に言われたことが頭の片隅から消えることなく、なかなか寝付けなかった。
もし紗季の言うように、二人が本当に同じ部屋で一夜を過ごしたのなら、関君は私に嘘を言ったことになる。
もちろん世の中にはつかなきゃいけない嘘もあるし、ついた方が良い嘘だってあるのはわかってる。
もしかしたら、その嘘は、何かしらの理由のある”嘘”かもしれない。
でも…それでもやっぱり、真実が知りたいと思ってはいけないのだろうか?
更衣室を出ると、執務室に向かう渡り廊下にでる。
今の浮かない気分とは対照的に、燦燦と陽光が降り注ぐ廊下を過ぎ、総務課に続く通路に繋がる広めの小ホールに、関君の後ろ姿を見つけた。
いつもなら追いかけて『おはよう』を言うのだけど、一瞬躊躇してしまい、その合間に通路の先から歩いてくる落合さんの姿が見えた。
咄嗟に、近くにあった柱に身を隠す。
『関さん!おはようございます』
心なしか、いつもよりワントーン明るい落合さんの声が聞こえてきた。
関君は立ち止まり、呼応するように短く単調な挨拶を交わすと、続けざまに『体調、もう大丈夫なのか?』と、昨日休んだ彼女に気遣う言葉をかける。
『はい、おかげさまで。週末の福岡では、大変ご迷惑をおかけしました』
『別に気にする必要はないだろ』
『いえ、出張先で体調崩すなんて、自分の自己管理が充分で無かった証拠です』
『あぁ確かにそれもそうだな』
『うっ…関さん、はっきり言いますね』
『こういうことをハッキリ言ってやるのもトレーナーの仕事の内だ。どっちにしろ、そう思うなら、あまり仕事に気負いすぎるなよ』
『はい、肝に銘じます』
『それに、ぶり返されたら俺のせいにされるしな』
『そこですか?』
『当たり前だ。俺の人事考課に影響する』
気のせいか、二人の会話の様子から、先週よりも二人の距離感が縮まっている気がした。
こちらは、通り過ぎる社員に怪しまれないよう、柱にもたれ誰かを待つ振りをして、ほんの少し二人を覗き見る。
水曜日。
昨日は、紗季に言われたことが頭の片隅から消えることなく、なかなか寝付けなかった。
もし紗季の言うように、二人が本当に同じ部屋で一夜を過ごしたのなら、関君は私に嘘を言ったことになる。
もちろん世の中にはつかなきゃいけない嘘もあるし、ついた方が良い嘘だってあるのはわかってる。
もしかしたら、その嘘は、何かしらの理由のある”嘘”かもしれない。
でも…それでもやっぱり、真実が知りたいと思ってはいけないのだろうか?
更衣室を出ると、執務室に向かう渡り廊下にでる。
今の浮かない気分とは対照的に、燦燦と陽光が降り注ぐ廊下を過ぎ、総務課に続く通路に繋がる広めの小ホールに、関君の後ろ姿を見つけた。
いつもなら追いかけて『おはよう』を言うのだけど、一瞬躊躇してしまい、その合間に通路の先から歩いてくる落合さんの姿が見えた。
咄嗟に、近くにあった柱に身を隠す。
『関さん!おはようございます』
心なしか、いつもよりワントーン明るい落合さんの声が聞こえてきた。
関君は立ち止まり、呼応するように短く単調な挨拶を交わすと、続けざまに『体調、もう大丈夫なのか?』と、昨日休んだ彼女に気遣う言葉をかける。
『はい、おかげさまで。週末の福岡では、大変ご迷惑をおかけしました』
『別に気にする必要はないだろ』
『いえ、出張先で体調崩すなんて、自分の自己管理が充分で無かった証拠です』
『あぁ確かにそれもそうだな』
『うっ…関さん、はっきり言いますね』
『こういうことをハッキリ言ってやるのもトレーナーの仕事の内だ。どっちにしろ、そう思うなら、あまり仕事に気負いすぎるなよ』
『はい、肝に銘じます』
『それに、ぶり返されたら俺のせいにされるしな』
『そこですか?』
『当たり前だ。俺の人事考課に影響する』
気のせいか、二人の会話の様子から、先週よりも二人の距離感が縮まっている気がした。
こちらは、通り過ぎる社員に怪しまれないよう、柱にもたれ誰かを待つ振りをして、ほんの少し二人を覗き見る。