Sweet break Ⅳ
『言っておくが、別に隠したわけじゃない。言う必要がなかったから言わなかっただけだ』
『必要がないってどういうこと?』
『確かにあの日、俺は落合と一緒の部屋にはいたが、勘繰っているようなことは何も無い。だか、正直にそう言ったところで、お前は信じないだろ』
『…それは』
『あぁなるほど…それであのメールの後半か。だとしたら、あまりに短絡的でくだらな過ぎる』

そう吐き捨てるように言われ、恥ずかしさと腹立たしさと、他にもいくつかのいろんな感情が入り混じり、今はとにかくこの場から直ぐに逃げたくなった。

『…私、仕事に戻る』

隙を見て、拘束されていた関君のパーソナルゾーンから逃げ出すと、すぐにまた腕を掴まれる。

『おい、待てよ。話はまだ終わってない』
『私はもう無いからっ、放して』

強く掴まれた腕を、無理矢理解こうと抵抗を試みる…と、


『おいおい、お前ら仕事の話で熱くなるのは良いが、ディスカッションは会議の時だけにしろよ』


揶揄うような声に振り向けば、4階通路から、臨時用の名札を掲げたスラリとした長身の男性社員が現れた。

『高崎さん』
『高崎さん』

関君と同時にその名を発した後、無言のまま高崎さんの目線が周囲に注がれ、その視線に促されるように周りを見れば、いつの間にか、数人の社員から遠巻きに注目を浴びていたことに気付く。

関君も気付いたのか、掴まれた腕も、直ぐに解放された。
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