Sweet break Ⅳ
『市販の薬のせいでボウっとしていたのもあるので、ハッキリ覚えていないんですけど、熱が高くて、知らない土地で一人でいるのがすごく不安になって…私に、一つしか無い部屋を譲って外に出ようとする関さんを、私が…私が引き留めたんです』
 
概ね想像通りだった上に、聞けば聞くほど、それはごく自然な成り行きで、誰が一緒でも同じようにしただろうと思えば、関君を攻める理由など見当たらなかった。

むしろ、そんな状態の落合さんを放って置くような人なら、好きになどなっていない。

『当たり前ですけど、倉沢さんが心配されているようなことは何もありません。ただ、無意識とはいえ、誤解を招くような状況を作ってしまったことは、なんて謝ったらいいのか…』
『ううん、謝らないで。そんな状況なら誰だってそうするよ…っていうか、こんなことで後輩にヤキモチ妬いてる私こそどうかしてる。…これじゃ関君に嫌われても仕方ないね』
『嫌われるなんて、そんなこと絶対無いです!』

なぜか強く断言した落合さんは、”これ、関さんに言うなって言われてたんですけど…”と前置きをしながら続ける。

『実はあの時、関さんホテルの部屋の外には出なかったんですけど、一緒の部屋にはいなかったんです』
『?…外には出てないけど、部屋にはいない?』
『そうです。今回宿泊したホテルの部屋は、比較的広めな造りで、入口入って少しスペースがあって、その先にベットが二つある部屋に繋がっていたんですけど、関さん、私のいたツインの部屋には入らず、手前の…入って直ぐの洗面前の床に座っていらして…』
『床に?』
『はい。最初に私をベットまで運んで下さった時以外は、朝までそこにずっと。ツインなのでベットも別ですし、気にせず使って欲しいとは言ったんですけど、彼女に…倉沢さんに悪いっておっしゃって…』
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