揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
『鈴、どうするつもり?そろそろ返事しないわけにもいかないでしょ。』


梨乃からも、そんなLINEが入って来る。


『そうだよね・・・。どうしたらいいんだろうな。正直に言えば、高橋さんの会社に興味はあるよ。高橋さんの下で働いてみたいって気はある。』


『なら、迷うことないじゃない。』


『そんな簡単な問題じゃないって、梨乃だってわかってるでしょ?仕事とプライベートは別、なんて綺麗事は今の私には、もう言えないってこと。』


『そこまで想いが募ってるんなら、もう行動に移すべきだよ。』


『私は達也を裏切りたくないし、裏切れない。私は達也を愛してる、達也を一生大切にするって決めたんだよ。だから達也と結婚したんだもん。』


『鈴・・・。』


『にも関わらず、私は揺れてる。高橋さんに口説かれたわけじゃない。会社に来ないかって、誘われてるだけなのに。勝手に私が一人で舞い上がってるだけ・・・。だから、達也は何も悪くない。これは私の問題なんだよ。』


『鈴、はっきり言っていい?』


『うん?』


『旦那さんを大切にしたいっていう鈴の気持ちは尊いと思うよ。でもさ・・・ひょっとしたら、出会う順番が違ってたのかもしれないじゃない。』


その梨乃からのLINEを見た時、鈴は一瞬、呼吸が止まった。


(出会う順番が違ってた・・・。)


その言葉は、あまりにも衝撃的だった。鈴がなんて返信していいか分からずに、そのメッセージの表示されているディスプレイを見つめていると


『だから私は、鈴がどんな結論を出しても、100%、鈴の味方だからね。』


とまたメッセージが送られて来た。


『うん。』


鈴は一言、そう返すのが、精一杯だった。


そして、怜奈からは


『あれから音沙汰ないけど大丈夫?まさか、まだ変な妄想に取りつかれてないよね?鈴、あなたにとって達也さんは運命の人なんでしょ?だから結婚したんでしょ?結婚って、そんな軽いもんじゃないよ。もし、そんな当たり前のこともわからなくなっちゃったんだとしたら、鈴はもう私の知らない人だからね。』


と釘を刺すようなメッセージが届いた。自分も愛する人と家庭を築き、母にもなった怜奈にとって、鈴の迷いが信じられないことなのだろう。


『わかってる、ありがとう。』


(怜奈の反応が普通だよね。私だって、逆の立場なら、間違いなく、そう言ってる。)


鈴はそう思わざるを得ない。


結局、鈴は高橋の誘いを断った。だが、その返事をする為に2人で会ったのを雅紀に目撃されてしまったのだ。
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