揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
鈴が家を出てから、最初の週末を翌日に控え、仕事を終えた達也は、雅紀と呑んでいた。


この騒動のきっかけを作ったと言える雅紀。そして今、達也がいろんな胸のうちを、さらけ出せる相手は、雅紀しかおらず、LINEや携帯で連絡を取り合うことが増えていたが、直接顔を合わす機会も増えていた。


「それで、これからどうするつもりなんだよ。」


雅紀に尋ねられて


「ホントに、どうしたらいいんだろうな?」


とため息交じりに答えた達也は


「お前はどうしたらいいと思う?」


と逆に問い返した。


「取り敢えずは、もう1度、会って話し合うしかないだろ?このままずっと別居してても、らち開かないし。」


ある意味、ひどくオーソドックスな答えを雅紀は返す。


「鈴と会って話す・・・か。」


そうポツンと言った達也は、コップを口に運ぶと、ビールをグイっと飲み干した。


「苦ぇな。」


そう言って、顔をしかめた達也は


「仕事してる時はいいんだけどな。家帰って、一人で飯食って、ビールかっくらって・・・あいつの姿は確かに、家の中にない。でもちょっと見渡せば、あいつの痕跡なんて、いくらでも転がってて、あいつとの思い出が有り余るくらい詰まってて・・・自分の家なのに、いたたまれなくなる。」


とため息混じりに言う。


「なんでこんなことになっちまったんだって、胸が苦しくなって、みっともないけど、涙があふれてきて、大声で叫びたくなって・・・。毎日、そんなことを繰り返しても、なんの解決にも前進にもならない。そんなことは百も承知なんだけどな・・・。」


「達也・・・。」


「昨日な、怜奈ちゃんから電話が来た。」


「怜奈ちゃんから?」


「ああ、開口一番謝られたよ。『鈴がバカなことをして、申し訳ありません』って。」


苦笑いする達也。


「そして、続けてこう言ってた。『鈴には、ちゃんと言って聞かせます。だから、今回のことは大目に見てやって下さい。鈴には達也さんが必要なんです。』って。」


「・・・。」


「鈴は怜奈ちゃんにも、相談してて、怒られてたよ。それでも目を覚まさせられなかったって、責任を感じてくれてるらしい。でも今回のことは、怜奈ちゃんから謝られる話でもないし、まして怜奈ちゃんがあいつに言って聞かせることでもねぇんだよ。」


そう言いながら、達也は空になった自分のコップに、ビ-ルを注いだ。
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