揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「なんで・・・お前、鈴と高橋のことに感づいたんだ?そんなにあの2人は怪しい雰囲気だったのか?」


ようやく達也がそう尋ねる。


「実は鈴ちゃんは、ある時期からミーティングが終わってから、高橋とお茶するようになってた。」


「えっ?」


それはそれで衝撃的な事実だった。


「見ようによっては、既に怪しいんだが、時間にすればせいぜい30分くらい。隠れてコソコソという雰囲気でもなく、聞くとはなしに、聞き耳を立ててみても、結構真面目な話をしてるんで、放っておいたんだが、だんだん鈴ちゃんの様子が変わって来た。」


「鈴の?」


「ああ。明らかに高橋に惹かれ始めてるのが、感じられるようになって来た。ビジネス上での尊敬が、恋愛感情に変わるって言うのは、あるあるの話で、まさにそんな感じだった。」


「・・・。」


知らず知らずのうちに、達也は唇をかみしめ、俯いていた。そんな達也を見ながら、ようやくビールを一口、口に運ぶと、飯田は続ける。


「もちろん鈴ちゃんは必死に平静を保とうとしていたし、周りも多分誰も気づかなかったんじゃないか。俺の知る限り、あの日の前にお茶以外の接触はなかったはずだし、高橋も特にモーションを掛けてた様子もない。ただ、高橋は鈴ちゃんの動揺は見破ってたろうな。爽やかなイケメンを装っているが、あの男は女に関しても、ビジネス同様、相当なやり手だぜ。」


そう言った飯田に


「お前はなんで気付いたんだ?」


と絞り出すような声で尋ねる達也。


「目が同じだったんだよ。」


「目?」


「鈴ちゃんは、お前を見る時、いつもあの目をしてた。本当に愛しい人を見る目でお前を見てた。俺はそれをずっと悔しい思いで見て来たんだ。忘れるな、俺は鈴ちゃんのファンだったんだからな。入社して来た鈴ちゃんに、最初に目を付けたのはお前じゃない。俺だからな。」


そう言って笑った飯田に


「笑い事じゃねぇよ。」


達也は思わず、語気を荒くしていた。


「だったら、なんでもっと早く、キチンと教えてくれなかった?」


「すまん。お前みたいな唐変木には、もっとちゃんと伝えるべきだったな。それは反省してる。」


「それに、鈴を窘めてくれても良かったじゃないか。」


更に詰め寄る達也に


「それは、俺にとっては『イッツ ノット マイビジネス』って奴だな。お前が旦那として、鈴ちゃんをもっとしっかり捕まえとけよって話だ。」


飯田は表情を固くして、そう言い放った。
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