揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「鈴の気持ちは・・・よくわかった。」
「えっ?」
「そこまで、高橋に心奪われているんなら・・・どうしようもない、か。勝ち目は・・・もう逆立ちしてもねぇんだろうな・・・。」
「ちょっと待って。私の話を最後まで・・・。」
自分の言葉を遮られて、慌てたように達也に言う鈴に
「ビジュアルもスペックも抜群。その上、仕事も出来て・・・これで女に惚れるなっていう方が無理な話だ。」
そう言うと、自嘲気味に笑う達也。そんな夫の姿に、鈴は思わず唇を噛み締めながら俯く。
「でもな、鈴。」
ここで、達也の口調が変わった。
「俺、これでも鈴の夫なんだ。鈴が運命の人だって、思ってくれた男なんだ。」
「達也・・・。」
「このまま、はいそうですかって・・・引き下がるつもり、ねぇからな。」
その達也の言葉に、ハッと顔を上げる鈴。
「鈴は誰にも渡さない、絶対に誰にも渡してたまるかよ!」
「達也・・・。」
「俺は、この世の誰よりも鈴を愛してる。そのことだけは誰にも負けない自信がある。だから、どんな金持ちのイケメンや権力者が鈴を奪いに来ようとも、俺は絶対に君を誰にも渡すつもりねぇから。」
(いけねぇ、飯田の言葉、パクっちまった・・・。)
一瞬、動揺しながらも達也は
「だから・・・鈴・・・どこにも行くな。いや、どこにも行かさない!」
と叫ぶように言った。ビシッと決められたか・・・そう思った次の瞬間、達也の涙腺が決壊した。
(やっちまった・・・。)
更に動揺する達也。この日、達也は決めていたことがあった。思い返せば、鈴と出会い、付き合い始め、結婚して、今日に至るまで、彼女の前でカッコよく決められたことなど、1度もなかった。我ながら呆れかえるばかりのヘタれの彼氏、夫だった。それでもこれまでは、鈴が自分に惚れてくれていたから、あばたもえくぼで過ごしてこられた。
だが今、到底太刀打ちできそうもない男に心惹かれている鈴の目に映る自分に、もはや今までのような、自分に有利なバイアスなんて、かかるはずもない。だとすれば、それが虚勢でも何でもいい。目一杯カッコ付けて、男らしく振舞おう、そう決めていた。にも関わらず、カッコつけるどころか、今まで妻の前で見せた記憶のない涙を流してしまった自分に、達也は絶望していた。
(今の鈴に、泣いてる姿なんか見せちまったら、ますます幻滅されるだけじゃねぇか。)
何とか涙を止めなければ、懸命に自分にそう言い聞かせてみても、涙を止める術などない。
(もう、どうにでもなれ!)
半ばやけっぱちの気分で、達也は言葉を続ける。
「えっ?」
「そこまで、高橋に心奪われているんなら・・・どうしようもない、か。勝ち目は・・・もう逆立ちしてもねぇんだろうな・・・。」
「ちょっと待って。私の話を最後まで・・・。」
自分の言葉を遮られて、慌てたように達也に言う鈴に
「ビジュアルもスペックも抜群。その上、仕事も出来て・・・これで女に惚れるなっていう方が無理な話だ。」
そう言うと、自嘲気味に笑う達也。そんな夫の姿に、鈴は思わず唇を噛み締めながら俯く。
「でもな、鈴。」
ここで、達也の口調が変わった。
「俺、これでも鈴の夫なんだ。鈴が運命の人だって、思ってくれた男なんだ。」
「達也・・・。」
「このまま、はいそうですかって・・・引き下がるつもり、ねぇからな。」
その達也の言葉に、ハッと顔を上げる鈴。
「鈴は誰にも渡さない、絶対に誰にも渡してたまるかよ!」
「達也・・・。」
「俺は、この世の誰よりも鈴を愛してる。そのことだけは誰にも負けない自信がある。だから、どんな金持ちのイケメンや権力者が鈴を奪いに来ようとも、俺は絶対に君を誰にも渡すつもりねぇから。」
(いけねぇ、飯田の言葉、パクっちまった・・・。)
一瞬、動揺しながらも達也は
「だから・・・鈴・・・どこにも行くな。いや、どこにも行かさない!」
と叫ぶように言った。ビシッと決められたか・・・そう思った次の瞬間、達也の涙腺が決壊した。
(やっちまった・・・。)
更に動揺する達也。この日、達也は決めていたことがあった。思い返せば、鈴と出会い、付き合い始め、結婚して、今日に至るまで、彼女の前でカッコよく決められたことなど、1度もなかった。我ながら呆れかえるばかりのヘタれの彼氏、夫だった。それでもこれまでは、鈴が自分に惚れてくれていたから、あばたもえくぼで過ごしてこられた。
だが今、到底太刀打ちできそうもない男に心惹かれている鈴の目に映る自分に、もはや今までのような、自分に有利なバイアスなんて、かかるはずもない。だとすれば、それが虚勢でも何でもいい。目一杯カッコ付けて、男らしく振舞おう、そう決めていた。にも関わらず、カッコつけるどころか、今まで妻の前で見せた記憶のない涙を流してしまった自分に、達也は絶望していた。
(今の鈴に、泣いてる姿なんか見せちまったら、ますます幻滅されるだけじゃねぇか。)
何とか涙を止めなければ、懸命に自分にそう言い聞かせてみても、涙を止める術などない。
(もう、どうにでもなれ!)
半ばやけっぱちの気分で、達也は言葉を続ける。