揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
鈴が温泉から戻って来て、部屋に入ると、既に灯りは消えている。
「達也、もう寝ちゃったの?」
やや不安げな声で鈴が尋ねると
「そんなわけないじゃん。」
それまで鈴に背を向けて寝ていた達也が、クルリと反転して、そう答えた。
「よかった。」
ホッとしたように笑顔になった鈴は、すぐに夫の横の布団に滑り込む。
「待ってたよ。」
「うん。」
身体を密着させて、見つめ合う2人。暗さに目が慣れて来て、お互いの表情がはっきりわかる。
「達也・・・。」
「鈴。」
名前を呼び合い、そしてそのままお互いの唇と唇が吸い寄せられるように重なって行く。舌を絡め合い、激しく腔内を愛し合う。やがて達也の手が、鈴の柔らかな膨らみに伸びてくる。その感触を楽しみ、敏感になった先端を弄る夫を、むろん拒むことはなく、やがて鈴の唇から、甘い吐息が漏れる。
唇が離れ、また見つめ合う2人。でも達也の妻を弄る手は、止まることはない。
「達也。」
「うん?」
「嬉しい。」
「鈴。」
「達也に抱きしめられて、達也の香りに包まれて、達也に愛されて・・・鈴はとっても幸せだよ。」
「鈴・・・。」
自分の顔をじっと見つめて、そんなことを言って来る妻に、達也ははにかんだように笑う。
「この幸せを私、1つ間違えたら、自分から手放しちゃってたんだね・・・。」
複雑そうな顔で、そう言った妻の顔を見ながら、達也は言葉が出ない。そんな夫に気を取り直したように
「達也・・・ありがとうね。」
と鈴は明るく言う。
「えっ?」
「今回、旅行に連れて来てくれたこと。」
「ああ。鈴のお疲れ様旅行だからな。のんびりと出来て良かった。ウチの両親がお邪魔虫だったけど。」
「そんなことないよ。お義父さんもお義母さんも喜んでくれたし。」
「それは鈴のおかげ。」
「それと・・・。」
「うん?」
「私を許してくれて、信じてくれて・・・本当にありがとう。」
「鈴・・・。」
「私、達也を傷付けた、信頼を裏切った。だから『もう信じられないし、一緒には居られない』って言われて、家を追い出されたのは当然の報いだったんだよ。でも追い出されて、もう達也のもとには帰れないかもしれないって、思い至った時、大げさじゃなく、身体が震えた、このままじゃ、次にあなたに会う時には、きっと離婚届に判を押させられる。絶対にそんなの嫌だって・・・。」
「・・・。」