揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
達也に告白することばかり、考えていたら、自分が誘われるという思わぬ事態になった鈴。


しかも、この後、別の先輩と同期から立て続けにお誘いや告白を受けてしまった。


入社してからはや半年。そろそろ、その手のことも解禁ということなのだろうか?自分だけでなく、同期生からも、そんな話を聞くようになり、中には付き合い始めたカップルもいるようだ。


そんな中、鈴はもちろん達也以外とそんなつもりは全くなかったから


「今はまだお仕事のことで、精一杯なんで。そういうことは考えられないんです・・・すみません。」


そんな言い方をして、いずれも丁重にお断りした。あたり障りのない回答ではあったが、反面その答えは、自分が達也に告白する道も閉ざしてしまう結果に繋がってしまった。


(仕方ないよ。まんざらウソじゃないし・・・。)


そう自分を納得させていた鈴だったが、困ったことが起きた。


他の連中が、鈴の答えに、取り敢えず引いた中、飯田だけが、全く意に介さずに、陰に陽にアタックを続けて来ることだった。


同じ部の、それも同じチームで仕事をすることが多い飯田との接触を避けることは難しく、ハッキリと拒絶することもなかなか言いにくい。


見かねた香織が、一応釘は刺してくれたが、相手が先輩でもあり、やはりそんなに強くは彼女も言えない。


未来は


「いいじゃん。飯田先輩、イケメンだし、仕事も出来るし。鈴も彼氏いないんだから、そんな頑なにならないで、付き合ってみれば。」


と言い、真純に至っては


「いいなぁ、鈴は。飯田先輩、私じゃダメなのかなぁ。」


なんて言い出す始末。


(私の気持ちなんて、誰もわかってくれない・・・。)


鈴は内心、ため息をつくしかなかった。


会社の人間には相談しづらくなった鈴は、怜奈や梨乃に話を持ち掛けた。


「鈴がそんなに嫌がっているのに、会社の上司は、なんにもしてくれないの?」


真面目な怜奈はそう憤るが


「セクハラとまでは言えないし、独身者同士の恋愛は自由だって言われちゃうと・・・。」


鈴のその答えに


「えっ?セクハラだよ、立派な。その上司、大丈夫?」


「その先輩、仕事出来るから、上司の覚えもめでたいんだよ。」


「今どき、そんな会社あるんだ・・・。鈴、上司がダメなら、そういうことを相談する窓口があるはずだから。」


怜奈が心配してくれるのは、有り難かったが、そこまで事を荒だてるのも・・・と鈴は思ってしまう。


一方、梨乃は


「鈴が最も苦手なタイプだもんね、グイグイ押してくる人。」


と笑ったあと


「その人には、他に好きな人がいますって、ハッキリ断って、達也さんに鈴がコクる。それが一番いい解決方法でしょ。」


あっさり決めつけた。
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