揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか？〜

駅近くの居酒屋に入った2人。


そこで鈴は、飯田に言い寄られて困っていることを告げた。何故それを僕に？そう言われても、仕方なかったが、達也は真剣な顔で、鈴の話を聞いてくれた。


「そうなんだ。飯田とは同期だから、たまに呑んだりするんだけど、確かに自信家でちょっと強引なとこはあるけど、決して悪い奴じゃない。それに見ての通り、イケメンだし、もし雨宮さんが彼氏いないなら、付き合ってみるのもありじゃないの？」


未来にも同じことを言われたが、他ならぬ達也に、そんなことを言われて、悲しくなった鈴は


「でも私、飯田さんは嫌なんです！」


と思わず、強い口調で言ってしまった。


「そっか・・・雨宮さんがそこまで言うんじゃなぁ。仕方ないな、だったら彼氏がいるとか言っちゃえば。それが一番手っ取り早いよ。」


「それが・・・彼氏がいないことは、飯田さんにバレちゃってるんです。」


「じゃ、好きな人がいるからと言ってみるとか・・・。」


「そのくらいで、引き下がってくれるなら、苦労しません。」


ここで、話が途切れた。達也はフッと1つ息をつくと


「食べなよ、せっかくの料理が冷めちゃうから。」


そう言って、自分はコップのビールをグイッと口に運ぶと、また鈴を見た。


「わかった。とにかく雨宮さんが、そこまで迷惑に思ってるんなら、僕から飯田に注意しとくよ。」


その達也の言葉に、鈴はハッと彼を見た。


「ただし、ハッキリ言って、飯田が僕のいうことに耳を傾ける保証なんてない。結局、何の役にもたたないかもしれないよ。その時は、ゴメンな。」


そう言った達也に、鈴は激しく頭を振る。


「いえ、とんでもありません。そんなふうに言っていただくだけで、嬉しいです。ありがとうございます。」


そう言って、鈴は頭を下げる。


「そんなお礼なんて言われちゃうと、かえって困っちゃうな。ただ、部署も違うし、大して親しくもない僕に、相談してくるくらいだから、よっぽど困ってるんだろうなと思って。先輩や上役にモノ申すのは、勇気がいるけど、同期の奴に言うくらいなら、ね・・・。」


そう言って、照れ臭そうに笑う達也。


「ううん、違います。昔からそうですよね、困ってる人を見ると、黙って見ていられない。達也さんはそういう人です。」


そう言って、鈴はまっすぐに達也を見た。


「えっ？」


その言葉に、達也は驚いたように、鈴を見た。