揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
2人の付き合いは順調だった。図らずも、会社公認のカップルになったことで、コソコソする必要がまずなくなったし、部署が違うことで、周りにあまり気を遣わせたり、迷惑を掛けることがないのが、気楽であり、また、周囲も暖かく見守ってくれることとなった。


鈴も達也も仕事には、真面目に取り組むタイプなので


「アイツら、浮かれてる。」


なんてことを言われることもなく、そして週末には思う存分、デートを楽しんだ。


そんな日々が続く中、達也は久しぶりに雅紀に会った。大学時代は、「ツレ」という表現がピッタリなくらい、ずっと行動を共にしていたが、お互い社会に出てからは、連絡もあまり取らなくなってしまった。


それでも、鈴と再会し、付き合い始めたことは報告したし、雅紀も喜んでくれた。


そんなある日、雅紀から


『仕事で、お前の会社の近くまで来た。』


との連絡をもらった達也は


『じゃあ、久しぶりに呑むか。』


という話になった。鈴に報告すると


「わぁ、雅紀さん、懐かしいなぁ。あの時は雅紀さんにもお世話になったし、よろしく伝えてね。」


いつの間にか、達也に敬語を使わなくなった鈴は、そう言って笑顔になった。


「それにしても、すげぇな。」


こうして迎えた久しぶりの席、雅紀は開口一番に言った。


「何が?」


「何がって、お前達のことだよ。こんなドラマか小説みたいなことが現実にあるんだな。」


しみじみと言う雅紀に


「まぁな。自分のことながら、俺もそう思うよ。」


と答える達也。


「あれから6年かぁ。鈴ちゃん、綺麗になったろう?」


「ああ。」


「なのに、よくフリーでお前の前に現れたよなぁ。やっぱり、そこらへんが運命って奴なのかな?」


「さぁな、俺にはよくわからんよ。」


逃したことを後悔し続けて来た魚を、思わぬ形で手に入れることが出来て、さぞテンションも上がっているだろうと思っていたら、あに図らんや、達也の反応が全く違っていて、雅紀は驚く。


「お前、なんでそんなテンション低いんだよ。あんなに恋い焦がれてた鈴ちゃんとまさかの再会した上に、カレカノになれたんだろ?何の不服があるんだ?」


「不服なんかあるわけないだろ。今だに夢じゃねぇかな、とは思ったりするけど。」


不思議そうに尋ねる雅紀に、そう答えた達也は、何故かフッとため息をついた。
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