揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「あんなアンバランスなカップル、長続きするわけねぇじゃん。」


鈴と達也の仲について、やっかみ半分で、そんな意地の悪いことを言っている飯田のような見方はもちろんあった。


「アンバランスって、おっしゃいますけど、冷静に見てみると、神野さんって決してスペック低くないですよ。」


それに対して、遠藤香織がそんなことを言う。今まで恋愛に消極的な男だと、レッテルを貼り、ハナから対象外扱いして来たが、ルックスはイケメンとまではいかないにしても、それなりに整っているし、なにより真面目で、誠実な人柄であるのは間違いないからと言うのだ。


「ヘタれ」をきれいに表現すると、「誠実」ということになるのかもしれない。


「それになにより、鈴は神野さんにぞっこんですからね。」


「飯田さんもいい加減に、鈴は諦めた方がいいと思いますよ。」


鈴の同期の寺内未来と望月真純にも、そんな風にたしなめられて、飯田は思わず絶句する。


今まで歯牙にもかけていなかった達也の評価が、「鈴との思いを6年の歳月を経て、通じ合わせた」というドラマチックな要素もあってか、俄かに女子の中で高まっていることに、イケメンとしてのプライドを傷つけられた飯田は、不愉快そうな表情を隠さずにその場を離れて行った。


こうして、周囲からの好意的な視線の中、2人は順調に愛を育んで行く。


「のんびりとお互いを知り合いながら、ゆっくりとお付き合いしたい。」


かつて、梨乃にそう語った鈴。そして、そのあと


「達也さんみたいな人は、どこかにいないかな。」


と続けたのを覚えている。そして今、その思いは間違ってなかったと実感出来る日々。


(やっぱり、達也さんだったんだ。私の運命の人は。)


その思いが強くなって来る。


初めて一緒に迎えたクリスマス。


「どこに行きたい?」


と聞かれた鈴は


「どこでもいい、達也さんと一緒なら。」


と躊躇うことなく答えた。バレンタインデーには、悪戦苦闘の末に初めて作った手づくりチョコを、まるで中学生のように恥じらい、ドキドキしながら手渡した。


「ありがとう。」


そう言って受け取った達也は、仕草は照れ臭そうに、でも満面の笑みだった。
< 35 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop