揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
秋が行き、冬が過ぎ、春が来た。
鈴は社会人になって3回目の春を迎えていた。
「それでは、今日はここまでにしたいと思います。実習日誌が終わった人から、退社して下さい。今日はお疲れ様でした。」
鈴は今、この春から入社した新入社員の教育を担当している。かつての自分達を見るような、フレッシュな新人達を、鈴は一所懸命、面倒見ている。
それはやり甲斐がある反面、責任も重い。
2年前を振り返ってみれば、まだ右も左も分からず、心細かった自分達を、香織が優しくそして、時には厳しく導いてくれた。香織の存在に安心し、香織の立ち振る舞いを見て、社会人としてのイロハを学んで行った。
今の会社員としての自分を作ってくれたのは、間違いなく香織だった。
(今の私は、あの時の香織さんのように、みんなを導いてあげられてるのかな?)
時に、鈴は不安になる。
「私、香織さんみたいに、ちゃんとやれてますかね?」
そう香織に聞いてみたい。でもそれは残念ながら、叶わない。
「どこかに、いい人いないかなぁ?」
アフター5になると、口癖のように、そんなことを言っていた香織が、突如婚約を発表して、鈴達を驚かせた。
相手は高校の2年先輩で、若きドクター。ずっと付き合っていたのだが、彼氏の親が息子の相手は医者か看護師でないと認めないと言って来たので、彼女の方から身を引いた。
ところが、しばらくしてから、突然彼氏が現れたかと思うと
「あの時は香織を守れなくてごめん。だけど、俺は国家試験にちゃんと受かったら、絶対に香織を迎えに行くと決めていた。親とは絶縁したって構わない。俺には香織と一緒にいられない人生なんか考えられないし、ハッキリ言って、そんな人生はいらない。」
と熱烈に口説かれたらしい。最初のうちは何を今更と冷たくあしらっていた香織も、結局は彼氏のことを忘れられずにいたので、その思いを受け入れ、結婚さらには寿退社の道を選んだのだ。
結婚はもちろんおめでたい話だが、香織の寿退社は惜しいとも意外とも鈴は思った。けど
「息子はただの一介の医師ではなく、将来、ウチの病院を継ぐことになる立場だ。なんとか家庭に入って、息子を支えてもらえないかって、彼の両親から頭を下げられちゃってね。」
と香織は笑った。
こうして、香織は3月の年度末をもって、会社を去って行ったのだ。
(香織さん、この子達は、先輩の穴を埋められるように、立派に私が指導します。見ていて下さいね。)
鈴は決意を新たにしていた。
鈴は社会人になって3回目の春を迎えていた。
「それでは、今日はここまでにしたいと思います。実習日誌が終わった人から、退社して下さい。今日はお疲れ様でした。」
鈴は今、この春から入社した新入社員の教育を担当している。かつての自分達を見るような、フレッシュな新人達を、鈴は一所懸命、面倒見ている。
それはやり甲斐がある反面、責任も重い。
2年前を振り返ってみれば、まだ右も左も分からず、心細かった自分達を、香織が優しくそして、時には厳しく導いてくれた。香織の存在に安心し、香織の立ち振る舞いを見て、社会人としてのイロハを学んで行った。
今の会社員としての自分を作ってくれたのは、間違いなく香織だった。
(今の私は、あの時の香織さんのように、みんなを導いてあげられてるのかな?)
時に、鈴は不安になる。
「私、香織さんみたいに、ちゃんとやれてますかね?」
そう香織に聞いてみたい。でもそれは残念ながら、叶わない。
「どこかに、いい人いないかなぁ?」
アフター5になると、口癖のように、そんなことを言っていた香織が、突如婚約を発表して、鈴達を驚かせた。
相手は高校の2年先輩で、若きドクター。ずっと付き合っていたのだが、彼氏の親が息子の相手は医者か看護師でないと認めないと言って来たので、彼女の方から身を引いた。
ところが、しばらくしてから、突然彼氏が現れたかと思うと
「あの時は香織を守れなくてごめん。だけど、俺は国家試験にちゃんと受かったら、絶対に香織を迎えに行くと決めていた。親とは絶縁したって構わない。俺には香織と一緒にいられない人生なんか考えられないし、ハッキリ言って、そんな人生はいらない。」
と熱烈に口説かれたらしい。最初のうちは何を今更と冷たくあしらっていた香織も、結局は彼氏のことを忘れられずにいたので、その思いを受け入れ、結婚さらには寿退社の道を選んだのだ。
結婚はもちろんおめでたい話だが、香織の寿退社は惜しいとも意外とも鈴は思った。けど
「息子はただの一介の医師ではなく、将来、ウチの病院を継ぐことになる立場だ。なんとか家庭に入って、息子を支えてもらえないかって、彼の両親から頭を下げられちゃってね。」
と香織は笑った。
こうして、香織は3月の年度末をもって、会社を去って行ったのだ。
(香織さん、この子達は、先輩の穴を埋められるように、立派に私が指導します。見ていて下さいね。)
鈴は決意を新たにしていた。