揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
翌日、鈴と達也は恒例の週末デート。一緒に見たい映画がある、そう鈴が誘った映画は、トロットロの純愛ラブストーリーだった。


手を恋人繋ぎに絡め、頭を自分の肩に預けて、映画に見入っている鈴。


『あなたに甘えたい。』


その鈴の思いが、彼女の全身から伝わって来るようで、達也は胸をつかれる。そして見終わったあと


「面白かった、達也さんは?」


と聞いて来た鈴は


「うん、いい映画だったね。」


「よかった。じゃ、行こう。」


達也の返事に嬉しそうに微笑むと、そう言って、寄り添って来る。


それからカフェでのお喋りからショッピング、そしてディナータイム・・・ありきたりな、でもとても心弾む時間が流れる。そんな2人の時間を満喫した恋人達が気が付けば、時計の針は、20時を過ぎていた。


さよならにはまだ少し早過ぎる。手を繋ぎ、街を歩いた。鮮やかにライトアップしたタワーが見える公園で2人はしばし立ち止まって、その美しい光景を一緒に見つめた。


このあと、駅に向かい、鈴の家の前に辿り着いたあと、しばし別れを惜しみ、見つめ合い、おやすみの口付けを交わして、名残惜しさを振り切るように、背を向けて歩き出す達也の後ろ姿を、鈴は見えなくなるまで見送る。それがいつもの2人のデートの終わりだ。


だがこの日は・・・タワーを見上げている鈴の横顔を、達也はいつしか眺めていた。その視線に気付いた鈴は


「どうしたの?」


と尋ねる。すると次の瞬間、鈴は達也の腕の中に閉じ込められる。


「達也、さん・・・?」


戸惑ったような声を上げた鈴に


「鈴、ごめん。」


と達也はつぶやくように言う。


「えっ?」


「鈴に辛い思いをさせてるなんて、俺、全然思いもよらなくて・・・。」


そう言って、強く抱きしめて来る達也に、鈴はますます戸惑うが


「岡田のことで、鈴を不安にさせちゃってたんだよな?本当にごめん。」


という達也の言葉にハッとする。


「達也さん・・・。」


「上本さんに昨日、叱られてしまった。思わせぶりな態度をとって、鈴と岡田の両方を傷つけてるって。」


「ひなた、そんなことをあなたに言ったの?」


「ああ、岡田との距離が近過ぎる。私達の時と全然違うって。」


「・・・。」


ずっとわだかまってた思いを、ひなたが代弁してくれたことを知って、鈴は彼女に申し訳ない気持ちになる。
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