揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「上本さん達の時と、今の岡田との距離感をあえて変えたのは確かなんだ。でもそれは間違っても岡田に俺が、個人的な感情を抱いたからじゃない。2年前の後悔があったからなんだ。」
達也は鈴を抱きしめながら言う。
「2年前、俺は上本さんともう一人、橋上さんという新入社員の面倒を見た。2人とも女子だったから、距離感をどうしたらいいか悩みながら、でも俺なりに懸命に彼女達に向き合ったつもりだった。でも橋上さんは、結局1年も経たないうちに退職してしまった。原因はいろいろあったんだろうけど、俺が指導官として、もう少し、彼女に手を差し伸べてあげられてたら、違った結果になったんじゃないか。その後悔がずっとあった。」
「達也さん・・・。」
「そして今回、岡田を預かることになった、それも自分が主任になったタイミングで。岡田は俺にとっては初めての部下。その部下を上司として、導いてやりたい、橋上さんのようには絶対にしたくないって、強く思ったんだ。2年前は、今にして思うと、2人に対して、かなり腰が引けた対応になってしまった気がする。だから今回は、もう少し新人との距離を縮めて、親身になって教育し、悩みも聞いてやれるようになりたい。その一心だったんだ。それがまさか、鈴の気持ちを乱すことになるなんて・・・。俺は、ダメだな。許してくれ。」
その達也の言葉に、鈴は頭を振る。
「ううん。私の方こそ、あなたの気持ちも知らないで、つまらないヤキモチ焼いて・・・自分だって、今指導官やってて、その大変さ、責任感は知ってるはずなのに・・・ごめんなさい、達也さん。」
そんなことを言う鈴が愛しくて、達也の彼女を抱きしめる力は自然に強くなる。
「何より許せないのは、そんな思いを抱いて苦しんでる鈴に全く気が付かなかった自分の鈍感さだ。」
「いいの。今日はいつもにもまして、いっぱい甘えて、あなたの心には私しかいないって、実感出来たから、もう安心してたの。だからもういいの。」
そう言って、身体をますます擦り寄せた鈴は、次に意を決したように、達也を見上げた。そして
「達也さん。」
と呼び掛ける。なんだい、と言うように自分を見た達也に
「帰りたく・・・ない。」
と消え入るような声で、でも精一杯の勇気を出して鈴は言った。
「今夜はずっと一緒に・・・。」
そのあとの言葉を鈴は紡げなかった。達也の唇が、彼女の可憐なそれを塞いだから。
甘く激しい口付け。夜の公園とは言え、当然全く人目がないわけではない。しかし、今の2人には、そんなことはどうでもよかった。
そして唇が離れ、見つめ合った2人。
「行こう。」
真っすぐ自分の目を見つめて、一言そう言った達也に、鈴は
「はい。」
という言葉と共に、コクンと頷いた。
達也は鈴を抱きしめながら言う。
「2年前、俺は上本さんともう一人、橋上さんという新入社員の面倒を見た。2人とも女子だったから、距離感をどうしたらいいか悩みながら、でも俺なりに懸命に彼女達に向き合ったつもりだった。でも橋上さんは、結局1年も経たないうちに退職してしまった。原因はいろいろあったんだろうけど、俺が指導官として、もう少し、彼女に手を差し伸べてあげられてたら、違った結果になったんじゃないか。その後悔がずっとあった。」
「達也さん・・・。」
「そして今回、岡田を預かることになった、それも自分が主任になったタイミングで。岡田は俺にとっては初めての部下。その部下を上司として、導いてやりたい、橋上さんのようには絶対にしたくないって、強く思ったんだ。2年前は、今にして思うと、2人に対して、かなり腰が引けた対応になってしまった気がする。だから今回は、もう少し新人との距離を縮めて、親身になって教育し、悩みも聞いてやれるようになりたい。その一心だったんだ。それがまさか、鈴の気持ちを乱すことになるなんて・・・。俺は、ダメだな。許してくれ。」
その達也の言葉に、鈴は頭を振る。
「ううん。私の方こそ、あなたの気持ちも知らないで、つまらないヤキモチ焼いて・・・自分だって、今指導官やってて、その大変さ、責任感は知ってるはずなのに・・・ごめんなさい、達也さん。」
そんなことを言う鈴が愛しくて、達也の彼女を抱きしめる力は自然に強くなる。
「何より許せないのは、そんな思いを抱いて苦しんでる鈴に全く気が付かなかった自分の鈍感さだ。」
「いいの。今日はいつもにもまして、いっぱい甘えて、あなたの心には私しかいないって、実感出来たから、もう安心してたの。だからもういいの。」
そう言って、身体をますます擦り寄せた鈴は、次に意を決したように、達也を見上げた。そして
「達也さん。」
と呼び掛ける。なんだい、と言うように自分を見た達也に
「帰りたく・・・ない。」
と消え入るような声で、でも精一杯の勇気を出して鈴は言った。
「今夜はずっと一緒に・・・。」
そのあとの言葉を鈴は紡げなかった。達也の唇が、彼女の可憐なそれを塞いだから。
甘く激しい口付け。夜の公園とは言え、当然全く人目がないわけではない。しかし、今の2人には、そんなことはどうでもよかった。
そして唇が離れ、見つめ合った2人。
「行こう。」
真っすぐ自分の目を見つめて、一言そう言った達也に、鈴は
「はい。」
という言葉と共に、コクンと頷いた。