揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「こんなこと言っちゃ、いけないかもしれないんだけど、鈴はさっき、梨乃ちゃんは自分のことを心配してくれてるって、言ったけど、本当かな?」


「えっ?」


「私は梨乃ちゃんと正直、合わないから余計にそんなこと思っちゃうんだろうけど、彼女は結局、鈴が幸せになるのが妬ましいんじゃないかな?」


「怜奈・・・。」


「女って、友達とか会社の同僚とかの結婚話、素直に祝福出来ない心理って、正直あるじゃん。」


「・・・。」


「なんで、あんたが私より先に幸せになるんだ。ふざけるなって思うこと、あるじゃない。」


「怜奈も?」


驚いたようにそう尋ねる鈴に


「時と場合、更には相手にもよると思うけど・・・あるよ。」


怜奈は答える。


「それに、梨乃ちゃんは寂しいんだと思うよ。達也さんに鈴を取られるのが。」


「えっ、それどういう意味?」


「鈴は、彼女と出会ってから、何事も彼女に相談して、彼女に頼って来た。2人で行動を共にすることも多かったでしょ?でも鈴に恋人が出来れば、やっぱりデートが優先になるし、まして結婚したら、今まで以上に、鈴を気軽に誘えなくなるから、一緒に遊ぶ時間も減っちゃう。それは梨乃ちゃんにとって、やっぱり悔しいし、寂しいんだよ。」


「そう、なのかな・・・?」


何事にも捌けていて、積極的な梨乃を、羨ましいとすら思って来た鈴は、彼女がそんな思いを抱いているなんて、信じられない思いだった。


「ごめん、余計なこと言っちゃったかも。今のは忘れて、鈴。」


複雑そうな表情を見せる鈴に、怜奈は慌てたようにそう言うと


「話を戻そう。」


と表情を改めた。


「前に達也さん、鈴とは結婚を視野に入れて、付き合ってると、あなたのお母さんにハッキリ言ったんだよね。」


「うん、言ってくれた。」


「それから1年・・・はまだ経ってないか。でもまぁ1年近く経って、2人の関係も完全に大人の関係になった。達也さんはちゃんと考えてると思うけどな。」


「怜奈・・・。」


「達也さんはどう見ても慎重派だし、だから鈴が不安になるのもわかるけど、でもその時の方便で、結婚を見据えてるなんて、いい加減なセリフは絶対に吐かない人だと思う。だから、もう少し、様子を見てみるのもありだと思うけどな、私は。」


「そう、かな?」


「それとも鈴の方から、思い切ってプロポーズしちゃうか?」


「そ、それだけは絶対無理、というかイヤ。」


鈴は首をブンブン横に振りながら、即答。


「さすがにプロポーズは男性の方からして欲しいよね。」


「うん。」


「だったら、もうしばらく、彼に時間をあげてもいいんじゃない?」 


そう言って、怜奈は微笑んだ。
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