揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「なぁ、鈴。」


それから少ししてから、達也が声を掛けて来た。なに?っと振り返った鈴に


「ここのところ、デートなかなか出来なくって、ゴメンな。」


達也は、ハンドルを握りながら言った。


「実は俺、ちょっと勉強してたんだ。」


「勉強?」


驚いたように聞き返す鈴に


「ある資格を取りたくってさ。」


少し照れ臭そうに達也は続けた。


「衛生管理者っていう資格なんだけど、50人以上の従業員がいる職場には、必ずいなきゃならないって、法律で定められてるんだ。」


「・・・。」


「主任になった時、会社から取れって言われて、取り敢えず受けてみたんだけど、結構難しくてさ。ボロボロだったんだよ。だから、今度は絶対に受かろうと思って、久しぶりに真面目に勉強した。その甲斐あって、お陰様で、無事合格出来たから、鈴に報告・・・。」


「なにそれ!」


達也の声を遮るように車内に響く鈴の声。それは、初めて聞く鈴の怒声だった。


「鈴・・・。」


戸惑ったような達也に


「本当にそれが理由なら、なんで今まで黙ってたの?資格取る為に、勉強しなきゃならないから、しばらくデートは毎週出来ないけど、ゴメンなって一言言ってくれれば、それで済んだじゃない。なのに、ハッキリ理由も言わないで、急にデートの回数減らして・・・私がどんなに不安だったかわかる?嫌われたのかな?飽きられたのかな?って、ずっと悩んでたんだよ。達也さんの意地悪!」


鈴は訴えるようにそう言うと、下を向いた。泣いているのは明らかだった。


「鈴、ごめん・・・。」


思わぬ鈴の怒りを受けて、達也はバツ悪そうに、そう声を掛けるが、鈴は達也の顔を見ようともしない。


重苦しい空気が車内に流れる。会話が途切れ、しかしそんな空気にお構いなく、車は走り続け、やがて、どこかの駐車場に入ると停まった。


「鈴、着いたよ。」


「しらない!」


達也はそう言葉を掛けるけど、鈴は全てを拒むように俯いたまま。


「鈴、お願いだから、顔を上げてくれ。どうしても、君と一緒に来たかった場所に着いたから。」


そんな鈴に優しく語り掛ける達也。その声に少し顔を上げて、前を見た鈴は、次の瞬間、ハッと達也の顔を見た。


「達也さん・・・。」


「降りよう。」


「はい。」


鈴は、今度は素直に頷いた。
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