揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
次の関門は達也の両親だ。


達也と違い、鈴は彼の両親とは全くの初対面。


(ご両親に気に入っていただけるかな?)


鈴の緊張は否が応にも高まる。


「大丈夫だよ。鈴に会って、ウチの親が四の五の言うわけないし、俺が言わせないから、安心しな。」


達也は笑うけど、実は達也は長男。女としては、その家に「嫁ぐ」という立場を意識せざるを得ず、それほど気楽には鈴はなれない。


果たして、当日。型通り、初対面の挨拶をし、家に招き入れられた鈴は、ぎこちなく、でも必死に達也の両親と話をしていたが、雰囲気はめちゃくちゃ重かった。


(どうしよう・・・。)


不安を隠し切れない鈴は、達也に視線を送るが、達也も予想もしなかった両親の硬い態度に戸惑っているのが、ありありと伝わって来る。


(私が片親だから、ご両親はお気に召さないのかも・・・。)


鈴がそんなマイナスの思いに沈んでいると


「ということで、今日鈴さんをお連れしたのは、彼女と結婚の約束が出来たので、報告する為だ。」


と、もはや見切り発車だと言わんばかりに、達也が両親に本題を切り出した。


(えっ、達也さん。そんないきなり・・・。)


鈴は戸惑ったが、もはやどうしようもない。難しい顔をして座っている達也の両親に向かって


「達也さんとは、以前より真剣に交際させていただいてましたが、先日プロポーズしていただき、喜んでお受けさせていただきました。また私の親にも、結婚の挨拶していただきました。まだまだ至らぬところの多い私ですが、達也さんと幸せで温かい家庭を築いて行きたいと思っております。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。」


用意して来た挨拶の言葉を必死に伝えると頭を下げる。もちろんその横で達也も同様に頭を下げた。


そして沈黙・・・相変わらず難しい顔の両親に


「なぁ、鈴さんがせっかく挨拶してくれたんだから、なんか言ってくれよ。」


たまりかねて達也が言う。


「鈴さん。」


ようやく父の高也(たかや)が口を開いたかと思うと


「考え直した方がいいんじゃないか?」


と、とんでもないことを言い出した。


「はぁ?」


と達也が唖然として聞き返し、鈴もびっくりしたように高也を見ていると


「君のような素敵なお嬢さんに、この唐変木が釣り合うはずがない。」


と更に言い募るから


「ちょ、ちょっと父さん、何言い出すんだ。」


慌てた達也は、母の佐知子(さちこ)を見た。
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