揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「やがて私は、大切にしようとしていたものが、お母さんとは根本的に違っていたということに気が付いた。私は、仕事を蔑ろやいい加減に考えるつもりはもちろんなかったが、家族との時間を大切にしたいと思っていた。しかしお母さんにとって、家庭はあくまで仕事をする為のベースでしかなかった。私は鈴の妹か弟が欲しかったが、それに対するお母さんの返事は『私のキャリアの邪魔をしたいの?』だった。」
(お母さん・・・。)
母の強烈な言葉が、鈴の胸をつく。
「お母さんにとっては、私は人生パートナーである以前に、社会における競争相手だったんだろうな。ところが、私が会社での出世にあまり意欲も興味も持たないことに、彼女は不満を感じていたようだ。やがて、彼女は私を『不甲斐ない』と感じ、ますます仕事にのめり込んで行った。私が家庭のことをやり、鈴と触れ合うのは当たり前という態度になって行った。ああこの人は、『結婚』『出産』というものを人並みに一度は経験したくて、私と結婚しただけなんだな。そう思ってしまった時、私の中で、何かが壊れたんだ。」
父の独白を、もはや鈴は圧倒されながら、聞き入るだけになっていた。
「あとは、もう自分を止めることが出来なかった。ハッキリ言って、不倫に堕ちたことについて、君のお母さんへの罪悪感は全くなかった。ただ、父親として、君に恥ずかしいことをしているという罪悪感、後悔はあった。しかし、もうどうしようもなかった。そして、破滅の日を迎えたんだ。」
11年の時を経て、赤裸々に語られた父の心情。それは鈴にとって、やはり衝撃であった。全てを受け止めるにはあまりにも重い告白だった。
沈黙が2人を包む。俯き加減の娘を、大輔はじっと見つめていたが、やがて鈴は顔を上げて、父を見た。
「お父さん。」
「うん?」
「1つだけ、言いたいことがある。」
「なんだい?」
「お母さんは口が裂けても、こんなこと言わないだろうし、多分私が知ってるとも思ってないはず。でもね、お母さんは、お父さんが出て行ってから、しばらく毎日泣いてたよ。」
その娘の言葉に、驚いたように目を見開く大輔。
「お父さんはお母さんに愛想を尽かしてたのかもしれないけど、お母さんはお父さんをやっぱり愛してたんだよ。そうじゃなきゃ、あのお母さんが泣いたりしないよ。」
「鈴・・・。」
その娘の言葉を聞いて、大輔は項垂れた。
(お母さん・・・。)
母の強烈な言葉が、鈴の胸をつく。
「お母さんにとっては、私は人生パートナーである以前に、社会における競争相手だったんだろうな。ところが、私が会社での出世にあまり意欲も興味も持たないことに、彼女は不満を感じていたようだ。やがて、彼女は私を『不甲斐ない』と感じ、ますます仕事にのめり込んで行った。私が家庭のことをやり、鈴と触れ合うのは当たり前という態度になって行った。ああこの人は、『結婚』『出産』というものを人並みに一度は経験したくて、私と結婚しただけなんだな。そう思ってしまった時、私の中で、何かが壊れたんだ。」
父の独白を、もはや鈴は圧倒されながら、聞き入るだけになっていた。
「あとは、もう自分を止めることが出来なかった。ハッキリ言って、不倫に堕ちたことについて、君のお母さんへの罪悪感は全くなかった。ただ、父親として、君に恥ずかしいことをしているという罪悪感、後悔はあった。しかし、もうどうしようもなかった。そして、破滅の日を迎えたんだ。」
11年の時を経て、赤裸々に語られた父の心情。それは鈴にとって、やはり衝撃であった。全てを受け止めるにはあまりにも重い告白だった。
沈黙が2人を包む。俯き加減の娘を、大輔はじっと見つめていたが、やがて鈴は顔を上げて、父を見た。
「お父さん。」
「うん?」
「1つだけ、言いたいことがある。」
「なんだい?」
「お母さんは口が裂けても、こんなこと言わないだろうし、多分私が知ってるとも思ってないはず。でもね、お母さんは、お父さんが出て行ってから、しばらく毎日泣いてたよ。」
その娘の言葉に、驚いたように目を見開く大輔。
「お父さんはお母さんに愛想を尽かしてたのかもしれないけど、お母さんはお父さんをやっぱり愛してたんだよ。そうじゃなきゃ、あのお母さんが泣いたりしないよ。」
「鈴・・・。」
その娘の言葉を聞いて、大輔は項垂れた。