揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
「実は私はあの時、君のお母さんが、私の不倫に気が付いたことに正直驚いた。彼女は、もはや私になんの興味もない、そう高を括っていたから、バレるなんて心配は全くといいくらいしていなかった。それがあれだけ周到に準備をして、私に迫って来たから、やはりこの人を見くびっていたな、とは思っていた。しかし・・・。」
「そうだよ。もちろん当時の私は子供で、何にもわからなかったけど、今ならわかる。お父さんとお母さんは、もっとちゃんと向き合うべきだった、ちゃんと話をすべきだったんだよ。だって夫婦なんだから、人生を共にしようって、誓ったパートナーだったんだから。娘として、そのことが、ただただ残念です。」
鈴のその言葉に、大輔はフゥと息をつくと、天井を見上げた。恐らく涙を堪えているんだろう、鈴は思っていた。
そして、落ち着いたのか、大輔が再び視線を鈴に戻した。
「鈴。」
「はい。」
「私は父親として、君と一緒にいられなくなってしまったことは後悔している。だが、当時の状況で、君の親権を求めることは無理だったろうし、今の妻と家庭を持つつもりだったから、無理に君を引き取っても、君の幸せにもならなかっただろう。つくづく自分勝手な父親だったと、今更ながら恥入るばかりだ。」
「・・・。」
「そして後悔していることが、もう1つある。それは不倫をしてしまったことだ。」
「えっ?」
その言葉の意味が分からずに、思わず父の顔を見つめる鈴。
「さっきも言った通り、私は不倫について、君のお母さんに対しては罪悪感を感じてはいなかった。私が不倫に走ったのは、当時の私の正義の中では、間違ってなかったからだ。妻が自分の中で、妻でなくなってしまった以上、それは仕方ないことだったってね。ただその正義はあくまで、自己中心の正義であって、世間一般には通用はしない。私のしたことは、非難を浴びて当然の行為だった。」
「・・・。」
「もっと話し合うべきだった、向き合うべきだった、さっきの君の言葉に、今は頷ける。しかし、当時の私には、全くその意欲も意思もなかった。だとすれば、キチンと順序を踏んで、まず、君のお母さんと別れるべきだった。そんな当たり前のことが分からず、出来なかった私は醜い裏切り者であり、敗北者だ。そのことは本当に後悔している。」
「お父さん・・・。」
「これから、幸せを掴もうとしている君に情けないことに父親として言えることはたった1つ。『私のようになるな。私達を反面教師にして、幸せな家庭を築いてくれ。』ただ、それだけだ。」
そう言い終わると、大輔は寂しそうに笑った。
「そうだよ。もちろん当時の私は子供で、何にもわからなかったけど、今ならわかる。お父さんとお母さんは、もっとちゃんと向き合うべきだった、ちゃんと話をすべきだったんだよ。だって夫婦なんだから、人生を共にしようって、誓ったパートナーだったんだから。娘として、そのことが、ただただ残念です。」
鈴のその言葉に、大輔はフゥと息をつくと、天井を見上げた。恐らく涙を堪えているんだろう、鈴は思っていた。
そして、落ち着いたのか、大輔が再び視線を鈴に戻した。
「鈴。」
「はい。」
「私は父親として、君と一緒にいられなくなってしまったことは後悔している。だが、当時の状況で、君の親権を求めることは無理だったろうし、今の妻と家庭を持つつもりだったから、無理に君を引き取っても、君の幸せにもならなかっただろう。つくづく自分勝手な父親だったと、今更ながら恥入るばかりだ。」
「・・・。」
「そして後悔していることが、もう1つある。それは不倫をしてしまったことだ。」
「えっ?」
その言葉の意味が分からずに、思わず父の顔を見つめる鈴。
「さっきも言った通り、私は不倫について、君のお母さんに対しては罪悪感を感じてはいなかった。私が不倫に走ったのは、当時の私の正義の中では、間違ってなかったからだ。妻が自分の中で、妻でなくなってしまった以上、それは仕方ないことだったってね。ただその正義はあくまで、自己中心の正義であって、世間一般には通用はしない。私のしたことは、非難を浴びて当然の行為だった。」
「・・・。」
「もっと話し合うべきだった、向き合うべきだった、さっきの君の言葉に、今は頷ける。しかし、当時の私には、全くその意欲も意思もなかった。だとすれば、キチンと順序を踏んで、まず、君のお母さんと別れるべきだった。そんな当たり前のことが分からず、出来なかった私は醜い裏切り者であり、敗北者だ。そのことは本当に後悔している。」
「お父さん・・・。」
「これから、幸せを掴もうとしている君に情けないことに父親として言えることはたった1つ。『私のようになるな。私達を反面教師にして、幸せな家庭を築いてくれ。』ただ、それだけだ。」
そう言い終わると、大輔は寂しそうに笑った。