揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
鈴達の努力が結実して、ある仲介商社を通じて、自社商品の欧州への販売ルートを確保したことを、社長がマスコミに大々的に発表したのは、それから少し経った頃だった。


業績拡大の大きな足掛かりを掴むこととなって、社内は沸き立っていた。


「達也〜、やっと終わったぁ。」


マスコミリリースがあった日の夜、家に帰り着いた途端、鈴はそう言って、達也の胸に飛び込んだ。


「大変だったな。お疲れ様。」


そんな妻を、達也は笑顔で抱き締める。


「鈴、頑張ったよ。褒めて。」


「ああ、本当によくやったよ、鈴は。お前の奥さんはよくやったって、俺まで褒められたくらいだから。」


「ご褒美。」


「えっ?」


「だから、ご褒美ちょうだい。」


とねだる妻に


「えっ、何がいいんだ?」


と返す達也。すると


「もう、決まってるじゃない。あ・な・た。」


と甘えた声を出す鈴。


「えっ?」


「人妻社員に、泊まりの出張までさせてさ。お陰で、達也不足がMAXなんですけど。」


「いや、でも今日は君も疲れてるだろうし・・・。」


「それどういうこと?あっ、まさかもう別口で間に合ってますって・・・?」


「バ、バカなこと言うなよ。」


鈴に睨まれて、慌てる達也。


「冗談よ。達也はそんなことする人じゃないもん。だから、いいでしょ?」


一転、そう可愛く言われては


「も、もちろんだよ。」


達也もあとには引けない。


「よかった。じゃ、先にシャワー浴びて来るね。」


そう言うと、鈴は達也を離れ、軽やかな足取りでバスルームに向かった。


出会った時は大人しくて、引っ込み思案な少女だった鈴。いや、今だって、仕事中やプライベートでも他の人の前では、真面目で大人しくて、しっかりしている妻。


それが一転、2人きりになると、デレデレの甘々になる。特に家での鈴は、完全に別人。そんな妻の豹変ぶりが、達也は当然嫌ではない。


(俺って、愛されてる。)


そんなことを考えていた達也の顔は、自然とニヤついていた。


そして、このあと、2人がどうなったかと言うと・・・まぁ、その描写は自粛させていただきたいと思います・・・。
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