揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
入社当時、男女合わせて、30人程いた同期生も転勤、転職、退職などを経て、今本社にいるのは12名。そのうちの男子7名が今日の会に、集結した。


こういう場で、何かと仕切り始めるのが営業部の飯田。人間的には、ひと癖もふた癖もあるが、営業マンとしての腕は確かで、同期の出世レースのトップを走っているのは、間違いなかった。


宴もたけなわとなり、いい気分になった飯田が、こんなことを言い出した。


「おい、今から競争だ。」


「なんの?」


「いいか、今から嫁さんか彼女に一斉に『愛してるよ』って、LINE、まぁメールの奴もいるかもしれねぇが、とにかく送る。誰の嫁さん、彼女から1番早く返信が来るか、まずその順番。更に内容、『私も愛してるよ。』か『何言ってんの?あんた。』なのか。それを加味して勝負する。」


「ちょっと待てよ。そりゃ嫁さんより、相手が彼女の奴の方が有利なんじゃねぇの?」


「そうだよ。ウチの嫁さんなんか、俺のLINEなんて、既読放置が日常茶飯事だぜ。」


と既婚者からブーイングが出るが


「情けねぇな、お前達。もうそんな感じなのかよ。その点、神野、お前は自信あるよな。」


飯田は少し挑発的に、達也を見る。正直、達也は内心、また飯田が下らんことをと呆れていたが、酒の席の戯言に、目くじらを立ててもと


「まぁ、それはやってみなきゃわからんよ。」


と応じる。


「そっか、神野のところには、敵わねぇよなぁ。今、鈴ちゃん、どこにいるんだ?家か?」


と聞かれて


「どうだろう?今日は俺が飲み会だから、どっかで飯でも食ってるか・・・でも、そろそろ帰ってるかも。」


と達也は答える。


「じゃ、圧倒的に神野が有利じゃねぇか。」


「そんなのわかるかよ。じゃ、始めるぞ。」


飯田は自信満々に言う。既婚者4人、彼女持ちが2人。残った寂しい完全お一人様が審判と言うことで、ゲームが始まった。


「ほら、来たぜ。」


真っ先に声を上げたのは飯田。続いて、続々と返信が届く。内容はやはり多くの返信が、何の略脈もなく送られてきたLINEに戸惑うものが多かった中、飯田夫人の真純だけが


『私も愛してる💕』


と百点満点の返信。


「俺の完勝だな。」


とご満悦の飯田に


「お前、事前に、真純ちゃんと打ち合わせてたんじゃないのか?」


と疑念の声が上がったが


「バカ言うな。これは日頃、いかに俺が真純を大切にして、愛してるか。その証明だよ。」


と飯田は高らかに勝利宣言だ。
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