揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
高橋との個人的な接触は、ミーティング後のお茶だけだ。時間にすれば、せいぜい30分程度。それも内容はほとんど仕事の話だ。
しかし、第三者の目から見れば
「あの2人は何なの?」
と思われても不思議ではない。まして鈴は夫のある身だ。もし逆の立場で、達也が同じことをしていたら、どんな気持ちになるだろう。
鈴がショックだったのは、自分がしていることが、そういう目で見られる可能性を全く考慮してなかった迂闊さ。いや、考慮どころか、その高橋との時間を、心待ちにしていたことに気が付いたことだった。
自分が高橋に、どんな思いを抱いているのか、鈴は気付かされたのだ。
(ダメ、ダメだよ鈴。)
その夜、帰宅した達也に、鈴はいつもにも増して甘えた。
「達也、だ〜い好き。」
そう言って、身体を擦り寄せてくる鈴を達也は、いつものように照れ臭そうに抱き寄せる。
(そうだよ、鈴。あなたには、大切な愛する旦那さんがいるんだから。)
夫の腕の中で、鈴は自分にそう言った。いや、言い聞かせた。
だけど・・・それがどれ程の効果があったのか。自分の気持ちに気付いてしまった鈴の中で、高橋への思いは膨らむ一方になって行ったのだ。
(私は一体どうしてしまったの?)
自分で自分を制御出来ない現実に、恐れおののき、苦悩する鈴。
そうこうしているうちに、プロジェクトは結実した。誇らしげに記者会見する社長の姿を、社内モニターで見ていた鈴は、1つの結論に達した。
(仕事を辞めよう。)
今回のプロジェクトは終了したが、高橋の会社との関係は、今後もより密接にして行くというのが、社長の方針だ。とすれば、これまでの流れで、自分がチームから外れることはないだろう。だとすれば・・・あってはならないことが起きるかもしれない、いや起こしてしまうかもしれない。
今の自分に自信が持てなかった。だとすれば、高橋から離れる方法を取るしかない。それが鈴の結論だった。
しかし、鈴の本心を知らない夫も夫の両親も、退職に反対した。確かに、今までのキャリアを捨てるのはもったいないと言われれば未練はあるし、現実問題として、夫の収入だけで、やって行けるかと言えば、今はともかく、将来は厳しいだろう。
「男性たるもの、妻を専業主婦にしても食わせて行けるという気概は持って欲しいもの。」
かつて母が、夫に言った言葉が甦り、鈴はフッとため息をつく。その母には、相談もしなかった。するだけ無駄なことがわかり切っていたからだ。
(私が、心を強く持てばいいだけのことじゃない。)
結局鈴は、そう思い定めるしかなかった。
しかし、第三者の目から見れば
「あの2人は何なの?」
と思われても不思議ではない。まして鈴は夫のある身だ。もし逆の立場で、達也が同じことをしていたら、どんな気持ちになるだろう。
鈴がショックだったのは、自分がしていることが、そういう目で見られる可能性を全く考慮してなかった迂闊さ。いや、考慮どころか、その高橋との時間を、心待ちにしていたことに気が付いたことだった。
自分が高橋に、どんな思いを抱いているのか、鈴は気付かされたのだ。
(ダメ、ダメだよ鈴。)
その夜、帰宅した達也に、鈴はいつもにも増して甘えた。
「達也、だ〜い好き。」
そう言って、身体を擦り寄せてくる鈴を達也は、いつものように照れ臭そうに抱き寄せる。
(そうだよ、鈴。あなたには、大切な愛する旦那さんがいるんだから。)
夫の腕の中で、鈴は自分にそう言った。いや、言い聞かせた。
だけど・・・それがどれ程の効果があったのか。自分の気持ちに気付いてしまった鈴の中で、高橋への思いは膨らむ一方になって行ったのだ。
(私は一体どうしてしまったの?)
自分で自分を制御出来ない現実に、恐れおののき、苦悩する鈴。
そうこうしているうちに、プロジェクトは結実した。誇らしげに記者会見する社長の姿を、社内モニターで見ていた鈴は、1つの結論に達した。
(仕事を辞めよう。)
今回のプロジェクトは終了したが、高橋の会社との関係は、今後もより密接にして行くというのが、社長の方針だ。とすれば、これまでの流れで、自分がチームから外れることはないだろう。だとすれば・・・あってはならないことが起きるかもしれない、いや起こしてしまうかもしれない。
今の自分に自信が持てなかった。だとすれば、高橋から離れる方法を取るしかない。それが鈴の結論だった。
しかし、鈴の本心を知らない夫も夫の両親も、退職に反対した。確かに、今までのキャリアを捨てるのはもったいないと言われれば未練はあるし、現実問題として、夫の収入だけで、やって行けるかと言えば、今はともかく、将来は厳しいだろう。
「男性たるもの、妻を専業主婦にしても食わせて行けるという気概は持って欲しいもの。」
かつて母が、夫に言った言葉が甦り、鈴はフッとため息をつく。その母には、相談もしなかった。するだけ無駄なことがわかり切っていたからだ。
(私が、心を強く持てばいいだけのことじゃない。)
結局鈴は、そう思い定めるしかなかった。