檸檬の約束ー淋しがりの君へー
廊下に出て、寝室に向かう。

「莢?」

「綾人・・・。」

莢は涙目で、足元には脱ぎ捨てられた衣装があった。

「どうしたの?」

「・・・ハロウィンパーティー行きたくない。」

ぽつり呟いた後、莢は泣き出してしまった。

「莢。」

抱きしめて背中をさする。

空っぽになるまで泣いていいよ、と指先で伝えながら。

「何も聞かない、の?」

「莢が言いたいなら聞くし、言いたくないなら聞かないよ。」

ひとしきり泣いて少し落ち着いた様子の莢。

「あのね。」

ハロウィンパーティーには持ち寄りで手料理を持ってくるようになっているらしい。

家事の中でも料理は不得手な莢が息詰まって癇癪を起こしてしまったのも無理はないと思った。

「ハロウィンパーティーでラテアート、披露するのはどう?」

咲紗にせがまれて絵をよく書いている莢。

可愛らしいクマのキャラクターはラテアートにぴったりだと思う。

「料理じゃないけど、いいのかな?」

「パーティーなんだから皆が喜んでくれたら良いんだよ。」

「出来るかな?」

「まだ時間はあるからきっと大丈夫。」

それからカプチーノでラテアートに奮闘した莢はすぐにコツを覚えて可愛いラテアートをかけるようになっていた。

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