眠れない夜をかぞえて
わざわざ報告をしなくてもいいだろうと思ったが、少なくとも、落ち込んでいた川奈には報告をした方がいいだろうと思った。

「休みの日に悪いな」

『どうかしたんですか? 何かトラブルでも?』

川奈に連絡をするときは、決まってトラブルの時だった。そう言われても仕方がない。

「いや、報告だ。桜庭の弟から聞いていると思うが、桜庭は今、ここにいるんだ。心配していると思って連絡をしたんだ」

『……美緒が』

「そうだ、起こしても起きないくらいにぐっすりと眠っている。だから、心配するな」

『一ノ瀬さん……待っていてくれてありがとうございます……本当に』

「おいおい、また泣いてんのか? 彼氏に俺が睨まれるだろうが」

『そんなに心が狭い男じゃありません』

「はは、悪かったな」

『———美緒をお願いします』

「心配するな」

川奈への連絡を済ませ、寝室を覗くと、身動ぎもしないで眠っている桜庭がいた。

それを見るだけで安心する。

これからもずっと続くようにと願いながら、桜庭の頬にキスをした。

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