眠れない夜をかぞえて
「おみやげごちそうさま」

「いいえ、たいした物じゃなくて」

「美味しかったわ」

「ありがとうございます」

「あのね、新ドラマのポスターが届くのよ、それを各フロアとエレベーターまえと」

「いつもと同じ場所ですよね。わかります」

「そうそう、それを貼って欲しいの。で、これは視聴率とチケット完売御礼のポップの原稿」

「それをプリントアウトして一緒に貼ればいいんですね。大きさもいつも通りで」

「そうよ、助かるわ。よろしく」

「はい」

ついアルバイトだと思って細かく指示をしてしまう。しーちゃんは別格だった。
しーちゃんでも出来る仕事を瑞穂と一緒にお願いをする。

「ごめんね、しーちゃん。頼んでばっかりで」

「忙しい方がいいですから」

「頼もしい」

本当に頼もしい。嫌な顔しないで仕事のヘルプをしてくれる。本当にシャインプロダクションに入社して欲しい人材だ。末は管理職も狙えるかも。

「ねえ、美緒は聞いてる? 「ベッドタイム」の男性モデル」

カメラテストのスケジュールを組んでいる瑞穂が、男が決まらなくて困ると嘆いていたのだ。

「決まってないんじゃなくて、誰だか分からないのよ、一ノ瀬さんに聞いても口を濁すだけで」

「うちのモデルじゃないのかな? 売り出さなくちゃいけないんだし、ここ制作だもの。うちの所属モデルを使う方がいいじゃない。宣伝第一なのにね」

絵コンテは見せてもらったが、女性はバックショットのみ。

このポスターはどうやら男が主役の様だ。

女性を抱きしめている男性が、こちらを見ている。その意図はやはり、舞台の内容からインスピレーションを感じたものだろう。

舞台も主役は俳優だ。それを見ると、やはり男性モデルには力がはいるのだろう。
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