眠れない夜をかぞえて
運よく席が空いている店があり、飛び込むようにしてはいると、アイスティーソーダを注文した。

「あー美味しい」

腕の時計を見ると待ち合わせ時間までちょうど一時間あった。

ここでゆっくりと本を読んで涼しんだら、良い時間になる。

脇に置いた買い物袋を除き、少しにやけてしまう。こんな気持ちになったのは久しぶりだ。

しかし、いったい二人そろってなんの話があるのだろう。なんか改まって嫌だ。

本は、順調に読み進めることが出来た。

いつも電車に揺られながら読んでいるが、電車に乗っている時間も少ないせいか、文庫本一冊を読むのにかなり時間がかかる。

本にのめり込んでしまっていて、はっと気が付くともうレストランに行かなくてはいけない時間になっていた。

慌ててグラスを返却口に返して、店を出た。

せっかく涼しんで汗も引いたのに、焦って歩き始めると、また汗が出てきた。

「ここだわ」

人気の店だけあって、とても落ち着いた外観でお洒落だ。

店のドアを開け、出迎えた店員に予約のことを告げると、もう来ているとのことで、席に案内された。

店は個室があり、小ぢんまりとした店に、二つの個室があった。

「こちらでございます」

「ありがとうございます」

ドアを開けてもらい中にはいると、二人並んで座っていて、私を見るなり立ち上がって畏まった。

「え? やだ、座ってよ」

「うん」

二人で顔を見合わせて、座ると、いつになく瑞穂がしおらしく大人しかった。こんな一面もあるのか。
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