眠れない夜をかぞえて
「唐沢さんがいつも行く喫茶店なんだ。唐沢さんの名前を言えば、好みのコーヒーを淹れてくれる。色々と忙しくさせてしまって悪いな」

「そんな、仕事ですから。一ノ瀬さんよりも仕事量は少ないですよ。気にしないでください」

「そう言ってくれると気が楽になるよ」

なんとかスムーズに会話が出来たようだ。

一ノ瀬さんが普通にしてくれているからだけど、告白をしておいて、この普通の態度が出来るのは、やはり大人だから? 

チェックリストを見ながら、別室でしーちゃんと用品を段ボールに入れて行く。

「スタジオの撮影ですけど、荷物があるんですね」

「いくらうちのモデルと言っても、出来る限りのことはしないとね。写真だけだと侮ってはいけないの、意外と時間がかかるのよ」

私も最初はパシャパシャと何枚か撮ったら終わりだろうと思っていた。

しかし、これが飛んだ間違いで、こっちが飽きるほど撮影は行われたのだ。私に芸術の理解は難しい。

「お菓子も沢山ですね」

「意外とみんな口さみしくなって食べるのよ。何もないと寂しいしね」

「参考になります」

ここでも汗だくで準備をする。まだ昼前だと言うのに、盛りだくさんの仕事内容だ。

へとへとになる私を余所にしーちゃんは元気いっぱいだ。

手伝ってくれたお礼にランチを御試走した。



< 43 / 132 >

この作品をシェア

pagetop