君に、この花言葉を
Anemone & Wisteria
「あの、この花をください！」

新幹線を降りた後、僕はスーツ姿にキャリーケースを引いたまま花屋に直行した。そしてある花を店員さんにラッピングしてもらって走っていく。

僕が向かっているのは、自分の家でも転勤する前にいて戻ることになった会社でもない。会社の近くにある公園。ただそこに向かって足を動かす。

真昼の公園には誰もいない。小学生や保育園の子どもたちがいないこの静かな時間に来れてラッキーかもしれない。今日は、どうしても言いたいことがあるんだ。

「藤崎（ふじさき）さん、おかえりなさい」

公園に僕がつくと、ベンチに座って読書をしていたショートカットの女性が立ち上がる。そして僕の方に走ってきた。

「三山（みやま）さん、ただいま」

僕が微笑むと、彼女も嬉しそうにする。僕たちはちょうど二年前にこの場所で出会った。そして僕はずっと三山さんに恋をしている。

二年前、仕事でミスをして上司に叱られて僕は少し落ち込んでいた。お昼休みは普段会社にある食堂で食べる。でも、どうしても気分が乗らなくて、コンビニでおにぎりを買ってこの公園でボウッとしてたんだ。
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