俺様アイドルが私の家に居座っている。
「怜、なんでここなの? 君なら一人暮らしぐらいできるでしょ」
「うるさい、オレ様がここに住むからここなの!」
「答えになってないんですが!」
納得できない。というか、できるわけがない。
「……じゃあ条件」
「はァ? オレ様に条件だと?」
「当たり前。ここは私が探して私が家賃払って住んでるんだから」
「……いいぜェ。なんでものんでやる」
私は頷いて考える。
正直この人には家賃生活費は全額払ってほしいぐらいだが、それはさすがにアレかな。
うーん、どうしよう。
紙に書き出すことにした。
「あなたが私に払うのは、家賃半分、生活費は四分の三。掃除とかも分担。でも洗濯
物は各自。
布団は来客用のものを交代で使う。ご飯は……その時考える」
「それだけでいいのか?」
「まだほしいの?」
「……オマエ、マジでバカだな。いいぜ、それで」
「よし、じゃあ決まりで」
今度は掃除とかの分担表を作ろうと思い裏紙を取りに行こうとすると、右手を思いっきり引っ張られた。
「うわっ!? なに!?」
「男と一緒に住むなら手出させない約束するだろ、普通」
「ちょっ……危ないじゃん!?」
顔が近い。さっきまで怜はテレビの向こう側にいたのに、今私は彼の腕の中にいる。凄まじい体温の上昇が私の緊張を物語る。
そんな私を愉しむように、怜はニヤニヤ笑っていた。
「沙良」
「……っ」
耳元で囁かれる。
いつもよりちょっとだけ低い声がくすぐったい。
「オレ様の下僕になれ」
……ああ、末期だ。
こんなこと言われて、少しだけドキドキするなんて。
でもそんな人だって思われたくないし。
「そんなの、絶対お断りします!」
バチーンといい音が部屋に響いた。
いそいそとお風呂掃除に行く私の顔が赤い理由、あの人はきっとわかっていない。