俺様アイドルが私の家に居座っている。
そうこうしているうちに録画するつもりだった番組が始まった。
「これ、オレ様が出たやつじゃねえか」
「うむ」
アイドルをフォーカスしたクイズバラエティー番組。
怜たちの他に、同じ事務所の先輩グループも出演している。先輩グループの方はさすがの私でも知っているほど有名だ。
怜はテレビの中でもオレ様オレ様わーきゃー騒いでいる。キャラ付けじゃない俺様、否、王様キャラなんて本当にいるんだって、いろいろ信じられない。
珍回答ばかりかましているにもかかわらず観覧席からは黄色い声援が飛んでいて、私は思わず笑ってしまった。
横を見れば、画面の中のはずの人が私の作ったチャーハンをガツガツ食べている。
おかわりしたらしい。
「ふふっ」
「あ? なに笑ってんだ、お前」
「いや、近いのに遠いなーって」
身近に感じるような相手じゃないし、私にはそんな資格もない。
ただあの日、偶然橋の下で出会っただけで。
「言っとくけど、オレ様は誰のところにでも住むわけじゃねーからな」
「ん?」
「……オマエだったから」
今ここにいる。
そう言って欲しかった。
お湯はりが終わったサインに邪魔される。普段と違って小さかった怜の続きの言葉は聞き取れなかった。
「先風呂入るぜ」
聞き返す前に彼は立ち上がった。チャーハンまだ食うから皿はそのまんまにしとけよ、とお風呂へ向かう。
「うん」
まあ、聞こえなかったけど、それでいい。
私を選んでくれているのなら、それだけで。