俺様アイドルが私の家に居座っている。

知らない一面


夏休みが終わり大学に通う毎日が始まると、驚きの速さで一日が終わっていく。

つい先日までガンガンつけていたクーラーは暖房にしてもよさそうなほどだった。


東京とはいえど、十一月、侮れない。


久しぶりになんの予定もない休日。いつもなら山積みの大学の課題も、今日は完璧に仕上げておいた。

そんなわけで、今日は思いっきり部屋で一人ダラダラする!
ダラダラするために早起きもしてやった。


まずはお気に入りの動画でも観ようかな。

テレビに画面共有しようとスマホを持ち上げた瞬間、電話がかかってきた。

ディスプレイには「王様」の文字。
うちに住み着くあの暴君アイドルからの着信だった。

良い予感がせず応答は気が引けたが、仕方なくスマホを耳元に近づける。


「もしもし?」
「出るのおせーぞ」
「うるさいなあ、なんの用?」


電話の向こうは騒がしい。人込みにでもいるのだろうか?


「今日の予定は?」
「なんもないけど」
「じゃあ、十時にハチ公前。来いよ」
「来いよってなっ‥‥‥」


切れた‥‥‥。


え、私、せっかくの休日に呼び出された?

しかも渋谷に十時?

今の時間から逆算したら‥‥‥。


「し、支度しなきゃ!!」


残念ながら、お人好しな私に行かないという選択肢はないのだった。

< 13 / 66 >

この作品をシェア

pagetop