俺様アイドルが私の家に居座っている。
知らない一面
夏休みが終わり大学に通う毎日が始まると、驚きの速さで一日が終わっていく。
つい先日までガンガンつけていたクーラーは暖房にしてもよさそうなほどだった。
東京とはいえど、十一月、侮れない。
久しぶりになんの予定もない休日。いつもなら山積みの大学の課題も、今日は完璧に仕上げておいた。
そんなわけで、今日は思いっきり部屋で一人ダラダラする!
ダラダラするために早起きもしてやった。
まずはお気に入りの動画でも観ようかな。
テレビに画面共有しようとスマホを持ち上げた瞬間、電話がかかってきた。
ディスプレイには「王様」の文字。
うちに住み着くあの暴君アイドルからの着信だった。
良い予感がせず応答は気が引けたが、仕方なくスマホを耳元に近づける。
「もしもし?」
「出るのおせーぞ」
「うるさいなあ、なんの用?」
電話の向こうは騒がしい。人込みにでもいるのだろうか?
「今日の予定は?」
「なんもないけど」
「じゃあ、十時にハチ公前。来いよ」
「来いよってなっ‥‥‥」
切れた‥‥‥。
え、私、せっかくの休日に呼び出された?
しかも渋谷に十時?
今の時間から逆算したら‥‥‥。
「し、支度しなきゃ!!」
残念ながら、お人好しな私に行かないという選択肢はないのだった。