俺様アイドルが私の家に居座っている。

赤い靴紐


年末年始は帰省していて、ずっと家を空けていた。

怜は好き勝手やっていたらしい。

帰ったらどんな悲惨な状況になっているものかとひやひやしていたが、むしろ帰省前よりも部屋は片付いていた。


まあ、忙しい彼はうちに帰ってきても、シャワー浴びて寝るぐらいしかしていないだろうからなあ。



「ツアーが始まって、毎日毎日レッスンレッスン。
しかもオレ様はそこそこやったら帰りてーのに、ウサギのヤローが全然帰らないせいでやめらんねーんだよ」


久々に一緒の夕ご飯。

私がバイト帰りに買ってきたお惣菜と炊き立てのご飯で口をいっぱいにしながら、怜はそうまくしたてた。


ウサギのヤローとは、同じユニットの兎束壇(うづかだん)くんのこと。

私たちと同い年。

いつでも冷めた眼差しのクールな見た目、高学歴で博識、さらに洗練されたしなやかなダンスを売りにしている。


高学歴といいつつ通っている大学は不明という何かと謎の多い人物。

アイドルが大学に通っていたら普通に個人情報流出とかありそうなのにな。


「兎束くん真面目そうだもんね。イメージ通りだなあ」
「おい、オレ様も同じ時間、いや、それ以上に練習してんだぞ」
「はいはいお疲れ様。ご飯お代わりは?」
「する」


怜は対抗心が強い。
おかげで兎束くんとも完全に不仲。


……私はもはや不仲芸だと思っているけれど。

山盛り二杯目のご飯を渡すともりもりと食べ始める。


今日も元気だ。


変わらない怜に、私は少しだけ居心地の良さを覚えた。
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