俺様アイドルが私の家に居座っている。
「まあその……ごめんね?本人から口止めされてたし、怜に言うほどのことでもないって思ったし……」
「別に怒ってねーよ」
めちゃくちゃ怒ってるじゃん!
いつもだったらそう言えたはずなのに、険悪な空気が邪魔をした。
作ってもらったご飯を素知らぬ顔で食べるのも気が引ける。
なんで彼が怒っているのか、理由が全く見えない。
「言っとくけど、俺は詩壇が編入することは知ってた。
さすがにお前の大学ってことは知らなかったし、そもそもお前がどの大学かなんて知らねーしな」
「それはもうちょっと私に興味持ってくれてもいいじゃん」
「覚えた」
「え?」
「もう名前も場所も覚えたからいつか行ってやる」
馬鹿なのかこの人は。
自分がアイドルということを自覚した方がいい。
「え、というか、手塚くんの編入知ってたならなんで怒ってるのよ」
「もういいっての! ほっとけ!」
まだご飯にほとんど手をつけていないのに立ち上がるから、思わず手首を掴んだ。
「どこ行くの!?」
「風呂!」
強めに振りほどかれて、彼はこちらを一瞥もせずシャワールームへ。
「そんなに嫌そうに払わなくたっていいじゃん……」
一人ぼっちの部屋、私の言葉は静かに空気に溶けた。