俺様アイドルが私の家に居座っている。

「手塚くん、やっほ」
「ああ、時森」


学食でたまたま見つけた手塚くんは、難しい顔でパソコンを見ていた。


「珍しいねこんなところで。なにしてるの」


画面のぞき込もうとして、即座に閉じられる。
あ、今のは無神経だった。


「普通にごめん」
「あ! いや、違う、違うぞ。なんか変なもの見てたとかじゃなくて……」


変なもの、見てたんだろうなあ……。
座るよう促され、反対側の椅子に腰を下ろす。


「時森、もう少しで誕生日だろ。なんかないのか、欲しいものとか」
「もう少しっていうか、一か月ぐらいあるけど……何で知ってるの」


どうせ例のアプリのプロフィールに設定してあったからとかなんだろうけれど。


「アプリに」


やっぱりそうだ。


「特にないよ欲しいもの。ニューアレの最前席以外」
「それは徳を積んでくれ」
「ぐぬぬ」


欲しいものか。あんまり考えないな。
私は美味しいものが食べれられて毎日そこそこにすごせればいい。


「……アイドルの俺じゃなくて、普通の大学生の俺ができそうなことだと助かるんだが……」


ぼそりと呟いた言葉に思わず顔を上げる。
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