【短】キミの髪を、ほどきたかった。
ポニーテール、シニヨン、ハーフアップ。
私にとって、厳しい校則に抗う方法はそれしかなかった。
「見た目のわりに、器用だなぁと思ってた」
「失礼な」
「だって、恋愛は不器用……だろ?」
「うっ……」
核心を突かれた私は、唇を噛み締める。
ミルクティを犠牲にしたのに、どうやら忘れてくれる気はないらしい。
「いつから付き合ってたっけ」
「……去年の、2月?とか」
そういえば、もう1年経っていたんだなぁ、と今更ながらに思う。
「出会いは家庭教師、地元の大学3年生……だったか」
記憶をたどるように、天井を仰ぐ伝馬。
そっか……知ってるんだっけ。
3年に入ってから、なぜかほとんど隣の彼。何かの拍子で話していても、不思議ではない。
まったく覚えてはいないけれど……。
「そう」
「仲良かったのに、なんで別れたの?振られた?振った?」
ズイッ、と椅子を引き寄せて、質問を重ねる彼。
なんだか、いつも以上に楽しそうだ。