【短】キミの髪を、ほどきたかった。

「だ……ダメだよっ、ぐしゃぐしゃになるし」

「うん……だよね」

頷きながらも、切なげに目を伏せる伝馬。
急にそんな顔……しないで。

「いいよ……チャンスはまだあるし」

「……どうゆうこと?」

やっと離された両手に、鼓動が落ち着く。
って……さっきまで私、どれほど荒立てていたんだろう。

「俺も、行くから」

息をつく私を横目に、カバンの中を探る伝馬。

そして、取り出した紙切れを前に掲げた。

「ん……?」

なになに……美術、大学……合格?

「昨日、届いた」

「うそ……ここ、難関って有名な」

「うん、めちゃくちゃ頑張った」

「すごいすごい……!おめでとう!」

首元に巻かれたネクタイのことなど忘れて、私は書面に食いついた。

「喜びすぎ」

合格通知の奥で、伝馬はほんのり頬を染める。

「だって、すごいじゃん!」

「うん。ありがとう……でもさ」

「でも?」

「俺が嬉しいのは、それだけじゃなくて」

……?
続く彼の言葉に、私は耳を澄ませた。

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