【短】キミの髪を、ほどきたかった。
「これ、貰うから」
そう言って、ひょいっと手に取り
「て、伝馬……っ」
彼が口に含んだのは、私の好きなミルクティ。
机の端にこっそり置いていた、飲みかけのミルクティ。
ゴクッ、と喉を鳴らす姿に、クラス中の女子が釘付けになる。
「うん、うまい」
そして、極めつけにこのセリフ。
だからもう……勘弁してほしいって言ったのに。
いや、言ってはないけれど。
満足げに目を細める伝馬を、私は横目で睨みあげた。
「……バカ」
「そんなこと言うと、また思い出しちゃうかもよ。高松が流されて……っちゃった、って話」
「~~っ……」
あぁ、もう。本当に最悪だ。
こんな腹黒い男に、弱みを握られるなんて。
でも……もういいか。
一週間経てば、この教室には戻らないのだから。
……戻れないのだから。
「で、倉橋さん。何の話してたの?」
「えっとねぇ、千歳が守銭奴の彼氏と別れた話」
「ちょぉぉぉ……っ、何聞いてんの!?てか、幸も何喋ってんの!?」
少し感傷に浸っていただけでこれだ。
本当に、油断も隙も無い。