【短】キミの髪を、ほどきたかった。
――――――……
「……帰らないの?」
「高松こそ、帰らないの?」
その日の放課後。
西日が照らす教室で、なぜか伝馬と2人きり。
オウム返しをする隣の彼に、私は眉をひそめた。
「幸を待ってるの。職員室にお呼び出しだって」
「……倉橋さんって結構やんちゃ?」
「違う違う、答辞の打ち合わせ。卒業生代表に選ばれたんだって」
「へぇ、すごいじゃん」
「でしょ。あれでも結構、優秀なんだから」
親友を褒められて、思わず得意げになる。
でも、そんなしたり顔はすぐに止んだ。
1か月もしないうちに、彼女とは離れ離れになってしまう。その事実を、思い出したから。