【短】キミの髪を、ほどきたかった。
「で、伝馬は?」
「ん?」
「なんで残ってるの」
寂しさから逃げるように、伝馬を問いただす。
それに……気がかりだった。卒業前の彼は多忙だと踏んでいたから。
主に、告白ラッシュで。
「別に。最後の教室を堪能してるだけ」
嘘っぽい。
殊勝な発言をする彼に、疑いの目を向けた。
「なんだよ」
「……いや、別に」
頬杖を突きながらこちらを見つめる彼。
私は思わず目を逸らす。
伝馬はどこか……いつも何かを見透かしているようで、少し怖いんだ。
いまだって、それは例外じゃない。
「高松」
だから、私の名前を呼ぶ透き通った声にも、肩が跳ねる。
「高松は、どこ行くんだっけ」
「……え?」
なんだ、急に。
突拍子もない彼の問いかけに、ぽかんと口を開ける。
「専門だっけ」
あぁ……進路の話ね。
「そう。美容の専門」
「専攻は、ヘアメイク……とか?」
口角を持ち上げて言う伝馬。
私は彼の視線を捉えて、大きく目を見開いた。