【短】キミの髪を、ほどきたかった。

だって

「なんでわかったの?」

本当に、その通りだったから。

視線の先で、大きな瞳がくしゃっと縮む。
何人もの女子を落としてきた、王子の笑顔。

あぁ、このことか……とひとり納得する。

「驚きすぎ」

手の甲で口元を覆いながら笑う、その仕草。
夕日に照らされた彼の黒髪が、優しく光る。

その様を、私は素直に綺麗だと思ってしまった。

「髪」

「え?」

「よくアレンジしてるじゃん。今日は、ポニーテール」

「あ……うん、よく気づいたね」

感心しながら、自分の毛束を手に取る私。
それにしても、ずいぶん伸びた。

「うちの学校ってさ、髪下すの禁止って知ってる?」

「ううん」

突拍子もない問いかけに、彼は平然と首を振る。

「ほかの学校はそうでもないのに、うちは"スカート膝丈、肩についたら結わく"が鉄則。女子にとってはお堅くてさ」

「へぇ……それで毎日、結わいてたのか」

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