地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
玲奈はオフィスビルの外に出ると、夕方だというのに、もわっとした暑さが残っていた。季節も八月半ばに来ると、真夏の陽気に体がなれてくるが、思わず顔をしかめてしまうのは、致し方が無い。
暑いなぁ……。
行きたくないなぁ……。
暑さに体がだるくなり、気分が下がる。
オフィスビルから少し離れた場所に加藤が運転する車を見つけ、玲奈は車内へと乗り込んだ。
加藤は玲奈が車に乗り込んだのを確認すると車を走らせた。
「玲奈様、家に帰っている余裕はありませんので、近くのブティックに寄り着替えをなさって下さい。よろしいですか?」
「ええ。お願い」
空港近くのブティックに寄り、服を着替えヘアメイクも施して貰う。
「お美しいですわ」
店員達は、ほぅっと溜め息をついた。
玲奈は店員達にお礼を述べ空港へと急ぐと、時刻は十八時五十分ちょうど良い時間だと思っていたが、ピピピと加藤のスマホが鳴った。
「はい。分かりました」
短い会話で電話を切ると加藤は運転席から玲奈の方へ振り返った。
「飛行機が少し遅れているようです。三十分ほど待たなくてはならない様なのですが、どうなさいますか?」
「このままここで待つわ」
「かしこまりました」
加藤は一礼すると運転席のドアを開け外へと出た。
あれ……?
何処へ行くのかしら?
玲奈が首をかしげた時、ガチャリッと玲奈の座っている反対側の後部座席のドアが開き、加藤が乗り込んできた。玲奈の隣へ座った加藤は真剣な瞳で玲奈を見つめ、両手をギュッと握りしめてきた。
その瞬間ドキンッと心臓が跳ね、ドキドキと早くなっていく。
「玲奈様……。ここから逃げ出したければ私が連れ出します。一緒に逃げてほしいと言うのなら二人で何処までも逃げましょう。どういたしますか?」
「加藤……」
「違いますよ……。匠です。呼んで下さい」
「匠……」
ふっ……と優しく笑った顔に、また胸がドキンッと跳ねた。
本当はここから逃げ出したい。
優人さんに会うのが怖い。
でも……。
玲奈の気持ちを察した匠の手が、そっと玲奈の頬に触れ、悲しそうに瞳がゆらりとゆれた。
「大丈夫、行ってくるわ」
匠は玲奈の頬に触れていた手を下ろすと拳をギュッと握りしめた。