地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
プロジェクト始動
*
月曜日の午後いつものように仕事をしていると社内がザワつき出す。
「ねぇ、ちょっと……あれって」
部長と一緒に扉から入ってきたのはA&Bの副社長、北大路優人だった。女性社員達の瞳はハートに変わり頬を染めていた。その中に萌も含まれている。
一人だけ頬を染めず唖然としているのは……玲奈だ。
優人は玲奈を見つけるとゆっくりと歩み寄った。
スリーピーススーツをビシッと着た優人さんは、今日もかっこいい。
玲奈も女性社員同様に優人を見惚れそうになったがキリッと顔を引き結ぶ。
「君が今回のプロジェクトリーダーだね」
優人に握手を求められ、思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「はぁ……?」
何のことだか意味が分からず、間の抜けた声が出てしまう。
優人はくすり笑い玲奈がおずおずと差しだした手を握った。玲奈はうろたえながら優人から視線を逸らし部長に助けを求めるように視線を投げた。
これはいったい、どういうこと?
部長はハンカチで額を拭きながらオロオロとしていた。
「いやーー急な話で悪いが今回のプロジェクトを一条くんにお願いしたいんだがどうだね?」
ちょっと待って……
もう握手してますし
これ、断れないんじゃ……。
「・・・・」
黙っている私を見つめていた優人さんは、悲しそうな顔をしながら首をかしげた。
「ダメ……ですか?」
くっ……。
ずるい
そんな顔をしないで
昔から玲奈はこの顔に弱い。
「……っ。分かりました。よろしくお願いします」
「ありがとう」
先ほどとは打って変わって笑顔になる優人。
うわっーー。
すごい
キラキラ王子様スマイル!!
女性社員達から「キャーー」っと悲鳴が響き渡る。興奮状態の女性社員達を落ち着かせるように、部長は「ゴホンッ」と咳払いをしてみせると、その場が少し落ち着き出す。
「それでだね、だれかに一条くんをサポートして貰いたいんだが……」
「「はい」」
手を上げたのは二人……山口涼と佐藤萌だった。
「山口くんと佐藤くんか……二人とも一年目だったね。うーーん」
一年目の二人には少し荷が重い気がして、部長は首をひねった。それに気がついた二人の声が重なり合い、ハモる。
「俺にやらせて下さい」「私にやらせて下さい」
「うーーん。一年目の二人には少し荷が重い気がするが……やらせてみるか」
「「はい。頑張らせていただきます」」
「おおーー。息ピッタリだな。ハッハッハッ」
やる気を見せる二人の様子に部長は満面の笑みを浮かべた。
「では早速会議室で話し合いを初めてくれ」
玲奈、涼、萌、優人の四人はlife(ライフ)の第一会議室で優人を中心に話し合いが始まった。
「今回我が社であるA&Bとlife(ライフ)とのコラボと言うことでシンプルで使いやすい居心地の良い空間を提供するというコンセプトで、マンション一棟をすべてをプロデュースすることになった」
「それって何階建てなんですか?」
「ん?三十階建てだ」
「「「三十階!!」」」
三人の声が会議室のに響き渡る。
「三十階と言っても一戸ずつ、すべて違うデザインにする訳ではなく十階ずつ、コンセプトを決めていこうと思っている。簡単に言うと女性向け、男性向け、ファミリー向けと言った所かな……何か良いアイデアはあるかな?一条くんどう?」
仕事と割り切っているのか玲奈のことを、玲奈とは呼ばずに一条くんと呼んでくれることに安心した。こんなところで、この人が自分の婚約者だと知られる訳にはいかない。
仕事に集中するのよ!!
「そうですね。女性向けにはエレガント、男性向けにはスタイリッシュ、ファミリー向けにはモダンにするのはどうですか?我が社ライフのシンプルで使いやすい雑貨にも合うと思います」