地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
翌日、玲奈、涼、萌の三人はオフィスビル四十八階のA&B社の会議室にいた。玲奈と涼は緊張から無口になっていたが、萌はいつもと何も変わらない様子で回りを見渡している。
「わーー。すっごーーい。同じオフィスビルなのにライフと全然違う!!A&Bって四十八階と四十七階使ってるんですよね?さすが大手は違いますよね」
今は萌のいつもと変わらない物怖じしないところが、ありがたい。玲奈は緊張をほぐすため、一度深呼吸を繰り返し、最後に息を一気に吐き出した。
「ふーー。さあ、もうすぐ副社長が来るわ、準備はいい?」
「「はい!!大丈夫です」」
今日も息ピッタリね。
クスクス笑っていると会議室の戸がガチャリと開いた。
「やあ、待たせたね」
颯爽と歩いてくる優人の姿に思わず息を飲み込んでしまう。
やっぱり優人さんはかっこいい。
玲奈の横を通り過ぎた時ふわっと爽やかな男性の香りがした。その香りのせいか、何も考えられず頭がポーッとして優人を目で追ってしまう。
萌も同じようにポーッと立ち尽くしていて、両手を胸の前で組み、まるで神に祈りを捧げる乙女のようだった。
優人が席に着き「始めようか」を合図に会議が始まった。三人で考えてきたデザイン画を一つ一つ説明していくと優人はジーッと画面を見たまま動かない。
気に入らない?
ダメだったかしら?
嫌な汗が背中を伝って落ちていく。
優人が沈黙を続けていたため会議室内が異様な空気になり、優人以外の三人の体がこわばり、緊張が高まっていく。
「いいね。これでいこう」
優人のその言葉に緊張から解放された体から力が抜けた。優人は沢山のデザイン画の中から気になる物を選択していった。
玲奈は優人が選んだデザイン画を確認し、データーに保存していく。
「では、こちらのデザイン画の家具と雑貨をマンションの方へ運ぶ作業へと移らせて貰います」
「よろしくたのんだよ」
無事に会議が終わり萌と涼が会議室から出て行ったため、玲奈も二人を追いかけて会議室を出ようとした時、優人が玲奈の手をつかんだ。
はっと顔を上げると、真剣な表情の優人の瞳と瞳がぶつかる。
「明日待ってる」
優人は玲奈の手を自分の口元にもっていくと、指先にチュッと口づけた。口づけられた指先から全身へと体が熱くなっていく。
何?
何でこんなのとするの。
親が決めただけの婚約者でしょう。
玲奈は優人の口元にある手をパッと自分の方へ引っ込めた。玲奈のこの拒絶ともとれる態度に、優人は驚いた顔をした後、悲しそうに顔を歪めた。
やだ……。
そんな顔しないで……。
「ごめんなさい」
消え入りそうな声で謝った玲奈は、その場から逃げ出した。